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査定面接と心理面接における関係性 h22



 

 

査定面接と心理面接の異なる側面

①査定面接は、心理面接への手段である。一方、心理面接は面接自体が目的である。

②査定面接は、情報収集という目的を持つ。そのために面接者主導で、指示的な態度を取ることもある。一方、心理面接は、問題解決や自己実現のために、クライエントが自ら気づきを得るように、面接者は非指示的な態度を取る。

③査定面接は、評価のための観察測定といった側面を持つ。そのことから、面接者はクライエントに対して客観的な姿勢を保つ。一方、心理面接は、問題解決や自己実現のために、面接者とクライエントが全人格的なかかわりによって相互作用をもたらす関係性である。

④査定面接では、陽性感情を主軸としたラポールを形成することにより、情報収集が促進される。一方、心理面接は、陰性感情も含むリレーションにより、しばしば抵抗もみられる。

 

査定面接と心理面接の同じ側面

①査定面接と心理面接は、相互作用的であり、分かち難く結びついている。

②査定面接がクライエントにとって治療的役割を果たす場合も多い。逆に、心理面接に査定面接の意味合いが生じてくる場合も少なくない。つまり、心理面接によって査定結果を見直すことも出てくる。そのようなことから、面接者がクライエントと結ぶ関係性は、基本的に同じであるともいえる。

③受容的態度・共感的理解・自己一致という基本的態度により、ラポールを築き、全人格的かかわりを持つように心掛ける。そのような関係性によって、専門家としてクライエントの福利に資する。

臨床心理的地域援助への個人面接・アセスメントの応用 h26

 

 

 

臨床心理学的地域援助とは

 

まず、臨床心理的地域援助をずばり定義すると、「臨床心理的地域援助とは、地域社会で生活を営んでいる人々の、心の問題の発生予防、心の支援、社会的能力の向上、その人々が生活している心理的社会的環境の調整、心に関する情報の提供などを行う臨床心理学的行為を指す」と私は定義をします。この定義によれば、臨床心理学的行為の対象は地域社会で生活を営んでいる人々であり、病院や施設に入院していたり収容されている人々ではありません。それは障害や病気を抱えながら地域社会で自立し自分の力で生活している人々、病気にはなっていないが日常生活の中でストレスを抱えて生活している人々、日々の地域生活家庭生活を営んでいる人々です。

 

臨床心理学的行為の内容

 

予防

第一に、心の問題が発生しないようにあらかじめ予防対策をすること、特に第一次予防を行うことです。心の病気の原因はまだはっきりしない点があったり原因が複雑であったりしますが、ストレスの軽減または除去や、ストレスマネージメントを行うことで心の病気の予防対策をたてることができます。

 

支援

次に、心の支援があります。障害や病気、悩みを抱え生活している人々を、それを支援するためのソーシャル・サポート・グルーブを作り、そのグループによって人々の心の支えとなったり、または個人的にカウンセリングやコンサルテーションによって人々の心の支えとなったりする活動です。

 

社会能力の向上

3つ目に、社会的能力の向上というのは、心の発達促進に手助けしたり、社会的能力を身につけるよう訓練活動に従事する活動です。発達障害児のケアや訓練、精神障害者回復クラブやデイケア・グループでの臨床心理学的行為がそれにあたります。

 

心理的・社会的環境の調整

4つ目の心理的・社会的環境の調整とは、問題を抱えた本人ではなく、その人を取り巻く環境側に働きかけ問題の解決を促進させる活動です。家庭では両親の養育態度の改善を図ったり、学校では教師が児童生徒をより適切に理解、指導できるよう援助したり、職場での雰囲気作りや学校環境の改善を行ったり、地域生活の環境の改善を行ったり、さらには社会制度の見直しに参加する活動であったりします。

 

心の問題についての情報を提供

最後に重要な活動として、地域生活を営んでいる人々に心の問題についての情報を提供する活動があります。それは心の病気についての知識と理解、心の仕組みや発達の仕方についての知識と理解の情報を提供する活動です。このような5点の活動を含む臨床心理学的行為が臨床心理的地域援助の内容です。

 

 

<引用文献>

 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscpjournal/5/1/5_39/_pdf

ケースカンファレンス h30



 

 

カンファレンス

カンファレンスは,“精神病院,精神科病院児童相談所,養護施設,大学の心理相談室などで 関係するスタッフ全員が定期的に集まり,入院・ 入所中の患者や入所者,受理した事例,心理療法心理検査を実施している事例,終結した事例, 対応が困難な事例などについて報告し,治療,心 理療法,処遇などの方針といったことについて検 討するもの”

 

ケースカンファレンスとは

ケースカンファレンスとは、「一事例の経過を詳しくたどりながら、クライエントについての理解、治療者の自己理解、クライエントと治療者の関係や相互作用についての理解、治療過程についての理解を深めようとする」(徳田、2007)検討会のことを言う。

 

心理臨床家になるためには、ケースカンファレンス(事例検討会)の体験が欠かせないとされている。

 

ケースカンファレンスで学ぶこと

 

報告された事例の理解を深めること。事例 を相対化,客観化し,距離を置いて見ることが 出来たり,参加者からのコメントを聞くことで, 新たな理解を得たり,適切な見立てを立てたり する。

 

報告事例を超えて,他の事例にも応用でき るような知識,視点を得ること

 

参加者が,事例報告者の実践を体験することができること。このことは,事例検討におい て共感的な理解を行う上で必要なことである。 また,他者の取り組みを自身の参考にするとい う意義もある。

 

心理臨床家としての自分自身の理解を深め ること

 

他のスタッフから心理的にサポートされる 場ということ

 

 

ケース発表を聴きながら“もやもや”する場合。 その内的な“もやもや”を、まずは心の中で言語 化する。そのうえで、それを発表者に伝えるか、 黙って「自分の問題」として考えるかを吟味する。

 

敬意を持って“わがこと”のように事例発表を聴き、一つ一つの表現に対して必死にコミットしな がら発表を聴いていると、うまく言葉にならないよ うな、腑に落ちないような気持ちになることがあ る。以前、大学院生のケースカンファレンス体験 についてのインタビュー調査を実施した際(牧ら、 2009)、研究協力者の語りに『なんとなくしっくり こない時があって、そういう時は何か凄いもやもや した感じ』『ちょっと消化するのに時間がほしい感 じがあるかも』といった語りがあった。その語りを 元に、筆者らは「“体で感じる違和感や不全感”と でも呼べるような“もやもや感”はケースカンファ レンスにおいて完全に取り除くことはできないよ うに思う」と考察した。そんなもやもやした気持ち を感じたときには、その正体が何なのか、まずは自 分の中でしっかりと考えてみることが必要となる。 鑪(1994)は、ケース発表を聞いていると「『ただ なんとなくおかしい』『なんとなく提出者に腹立た しい』といったことがよく起こるものである。その 時、自分の気持ちをじっくりと整理する。そして、 内的なもやもやを言葉にしてみる。」ことを勧めて いる。しかし、この「ケースカンファレンス中に感 じるもやもや」を言語化することは、実はとても難 しいことだと思う。「ある場合には、自分の特定の 関心によって、どのような事例を見ても、読んでも、 その特定の関心に結びつけてしまうことが起こる」 (鑪、1994)こともあり、また、自分自身のコンプレッ クスや課題と重なっていることもあるためだ。たと えば、「母親への不満をセラピストに激しくぶつけ るクライエントの語り」にもやもやするとき、それ は、自分自身の母親コンプレックスが刺激されてい るからかもしれない。自分の中で見極め、「自分自 身のコンプレックス」から来ていると判断された場 合は、自分の問題をじっくりと考えるという心の作 業も重要となるだろう。

 

 

クライエントへの敬意、セラピスト(発表者)へ の敬意を忘れない。

 

筆者が大学院生時代にケースカンファレンスに 参加したとき、最初は非常に戸惑ったことを覚えている。実際の心理療法の話を聞き、『学生(大学院生) の自分がこれを聞いてよいのだろうか?』『これを 聞く資格が自分にはあるのだろうか?』という戸惑 いだったと思う。大学生から大学院生になると、「学 生から相談室スタッフへ」と基本的な姿勢を変えな ければならないが、そのことが最初はしっかりと理 解できないように思う。つまり、セラピストとして の基本姿勢を学ぶことがケースカンファレンスの 重要な目的の一つだと言える。基本姿勢としてまず 必要なことは、当然のことかもしれないが、クライ エントへの敬意、セラピスト(発表者)への敬意で ある。



 

 

<引用文献>

 

 

https://teapot.lib.ocha.ac.jp/records/34110

 

 

https://archives.bukkyo-u.ac.jp/rp-contents/RK/0027/RK00270L001.pdf

個人スーパービジョンとグループスーパービジョン r3 h25

 

 

 

 

スーパービジョンとは

専門性を共有しうる関係を基礎にして、スーパーバイジーの専門性と資質の向上をめざして行われる心理的・教育的サポート。共通の専門性や役割をもつ上級者が行なう指導・監督。

スーパーバイジーがカウンセラーや心理臨床家としての問題や課題に自分で気づき、それに主体的に取り組み、それを解決していくことができるようにするための継続的な援助関係である。

 

個人スーパービジョンとは

 

個人スーパーヴィジョンは,二者関係 (一人のスーパーヴァイザーと一人のスー パーヴァイジー)のなかで行われるものである。

 

個人スーパーヴィジョンの特徴

個人スーパーヴィジョンの特徴は, 安全感が高い,きめ細やかな関わりが できるという点である。

 

グループスーパービジョンとは

グループ・スーパーヴィジョンは三者以上関係(一人のスーパーヴァイザーと複数 のスーパーヴァイジー)のなかで行われるものである。

 

グループ・スーパーヴィジョンの特徴

 

グループ・スーパーヴィジョ ンの特徴は,次のようなグループ特有のメカニズムが働くという点である。

経済性(労力的,時間的,金銭的に経 済的)。

観察効果(他のスーパーヴァイジーの 事例を聞くことで視野が広がる)。

普遍化(他の人も自分と同じように苦 労したり悩んだりしていることを知り気 が楽になる)。

希望(自分の事例がうまくいっていな い時に,他の人の事例がうまく展開して いるのを知ることで自分もやれるかもし れないと希望が持てる)。

多様なダイナミックな相互作用(スー パーヴァイザーとスーパーヴァイジー,スーパーヴァイジーとスーパーヴァイ ジーの間での多様なダイナミックな相互 作用が起こる)。 

スーパーヴァイジーのスーパーヴァイザー的機能の活用(スーパーヴァイジー が他のスーパーヴァイジーに質問したり 意見を述べることでスーパーヴァイジー のスーパーヴァイザー的機能が活用され る)。

スーパーヴァイザーへの依存性が強くなりすぎない(スーパーヴァイジーが複 数おり,スーパーヴァイジー同士の相互 作用も行われるため依存性が強くなりすぎない)。

 

 

スーパービジョンの意義・目的・価値

スーパーヴィジョンの目的は,次のとお りである。 スーパーヴァイジーの<意欲>の向 上:やる気を起こさせる。 スーパーヴァイジーの<能力>の向 上:相手についての「見立て」(理解)と 「手立て」(関わり)の力のアップさせる。 時折,スーパーヴィジョンを受けて意欲 がそがれたり落ち込んだりするといったこ とを耳にするが,それは目的に反すること である。

 

スーパーヴァイザーの役割

スーパーヴァイジーのやる気を育てる 混乱したり自信をなくしたり疲れたり傷 ついたりしているスーパーヴァイジーにエネルギーを充電して,「さあ,やっていこ う!」とやる気を持てるようにということ を心がける。

 

ケースとスーパーヴァイジーを安全に 守る 難しいケースでは,援助構造が不安定に なり,ケースとスーパーヴァイジーの双方 が危険な状態に陥ることがあるが,そのよ うな時にそれについて指摘するとともに対 応について話し合う。

 

サポーティブな態度を維持する スーパーヴィジョンでは安心感・信頼感 が大切であると考えるので,一貫してスー パーヴァイジーを尊重し,温かなサポーテ ィブな態度を維持するようにする。

 

ケース理解を深め広げる ケースの心理の理解,行動の意味の理解 等について,スーパーヴァイジーにできる だけ意識化・言語化してもらった上で,そ れ以外の理解もあることをスーパーヴァイ ザーのコメントを通して知ってもらい, ケース理解を深めたり広げる。

 

その人の持ち味を生かす ケースへの関わり方を問題にする時, スーパーヴァイジーの持ち味(パーソナリ ティー)がうまく生きていくようなやり方 は何かということに気を配る。スーパーヴ ァイザーとスーパーヴァイジーは違った持 ち味を持っているので,スーパーヴァイ ザーの持ち味を生かしたやり方を押し付け るのではなく,スーパーヴァイジーの持ち 味が発揮されるようなやり方を考えてい く。

 

スーパーヴァイジーのパーソナリテ ィーの問題には深入りしない スーパーヴィジョンを進めていくうちに,単なる技法の話しだけに留まらず, スーパーヴァイジー自身のパーソナリテ ィーが問題になってくることがあるけれど も,そこには極力深入りしないようにす る。そのようなことは,できれば教育的カ ウンセリング(教育分析)という構造の中で 扱う方がよいと考える。

 

グループスーパービジョンの臨床現場での活用方法

 

 

 

 

<引用文献>

 

 

心理面接とインフォームドコンセント r4

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ポイント

 

心理面接の過程

 

申し込み

クライエントによる申し込み。または、医師や行政から依頼。

 

インテーク面接(受理面接/初回面接)

インテーク面接では、質問や観察を通して情報収集を行う(参照:アセスメント方法)・クライエントとの初めての面接であり、「ラポール」の形成を行う。・主訴や来談経緯を聴くことから始める。情報収集を早まらず、漏れの無い収集よりも、「クライエントの話の流れを損なわないこと」を重視する。・面接結果に基づき、面接継続か「リファー」の判断を行う。

 

査定面接・心理検査

査定面接ではクライエントのパーソナリティや行動特徴などを多面的に評価する。面接や心理検査を通して、クライエントの不適応的な側面と健康的側面(ストレングス)、及び潜在的な可能性も評価し、全人格的理解を試みる。(参照:テストバッテリー留意点)。

 

治療契約の締結

査定面接に基づく所見をクライエントに伝え、治療方法や時間、料金などの治療構造のインフォームド・コンセントを得て、治療契約を結ぶ(作業同盟)。

 

治療面接

心理的介入を行う。(心理療法カウンセリング)見立て(仮説)を検証し、修正しながら介入を行っていく。必要な関係者他職種との連携を行う。

 

中断(ドロップアウト

治療目標を達成せずに、様々な要因によって途中で面接が打ち切られてしまう「中断(ドロップアウト) 」という形で終わることも多い。面接の中断の理由としては、双方の「病気や転勤」、クライエントの「動機付けの低さ」、「不信感、抵「抗」、「症状や行動パターン」、「自立の試み(特に思春期や青年期)」などが挙げられる。

 

終結

治療目標の達成できた場合は、クライエントとの合意によって面接を終結する。終結に向けて、「これまでの面接に関する見解、終結に対するクライエントの感情や考え、終結後の相談について」などをクライエントと話し合う。見捨てられ感を抱かないように「開かれた終結」(いつでも相談に来れる形での終結)を行う事に留意する。

 

インフォームド・コンセント

 

インフォームド・コンセントとは

説明と同意。つまり、心理面接においてはクライエントが心理的援助の内容に関する十分な説明を受けて、それを理解した上で自由意志に基づきそれに同意すること。

 

インフォームド・コンセントの目的

 

インフォームド・コンセントでは、治療を受けるかどうかを決定するにあたって3つの要素が要求される。第1は医師からの情報が開示されること、第2に、自発的な選択ができるような環境でなされること、第3に、患者に治療を受けるかどうかを判断する能力が備わっていることである(北村北村・塚田・加藤、2006)。これらの要件は、治療関係のあり方に関する原則であり、医師と患者の対話を通して治療関係をより信頼のあるものとし、共同の意思決定を行うことで患者自身が主体的に治療に取り組んでいくことを目的とする(中島、1995)。医師と患者との間に存在する情報の差を可能な限り縮小させ(五十嵐、2004)、最終的には、実際に治療を受ける患者自身の意思や価値観などに基づいた患者の自己決定権が優先されなければならない(金沢、2006)。心理臨床家の行うインフォームド・コンセントの目的も医療における目的と変わることはない。クライエントが自己決定できるように十分な情報を伝達し自己決定の上でクライエントが主体的に臨床心理学的援助に取り組めるように支持する。

 

インフォームド・コンセントの内容

 

インフォームド・コンセントは一般に医師による治療について行うものであり、その内容は、検査や治療についての目的や内容病状と診断結果(病名)、治療方針、治療内容(投薬内容など)、予測される死亡や身体障害のリスク、見通し(予後)、検査や治療行為に伴って生じる生活上の変化、治療のために利用可能な各種の保健福祉サービスについての情報、かかる費用などである(志自岐、2006)。これらは方針を自己決定するために必要とされる情報であり、患者は説明を元に自身の価値観に基づいて方針を選択する。心理臨床家の行うインフォームド・コンセントの内容も医師が行うものと本質的に異なるものではない。

 

金沢(2006)は心理面接におけるインフォームド・コンセントの具体的内容として、

援助の内容・方法について(援助の効果とリスク、援助を行わない場合のリスクと益など)、

秘密保持について(秘密の守られ方とその限界についてなど)、

費用について(費用と支払い方法など)、

時間について(時間帯・相談時間、場所、機関など)、

心理臨床家の訓練などについて(心理臨床家の訓練、経験、資格、職種、理論的立場など)。

質問・苦情などについて(カウンセリングはいつでも中止することができることなど)、その他、7点を挙げている。

 

インフォームドコンセントの必要性と影響

インフォームド・コンセントは、援助者の倫理・義務につながるだけでなく、クライエントの間にラポールを築くことにつながる。

インフォームド・コンセントを受けることで医師、薬剤師とのコミュニケーションがよくなり、信頼関係が高まるほか、治療や薬の必要性が理解できるので、患者さんがより積極的に治療に参加できるようになる効果もあります。 医師の考えがわかれば患者さんも意見をいうことができ、不安感をなくすことにもつながります。

 

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ダニエル・J・レビンソン(Levinson,D.J)

 

ポイント


レビンソンは、ユングの理論をもとに人生の発達段階・ライフサイクルを四季(人生の四季)になぞらえ以下の4つの発達期があるとした。

 

面接法を用いて、実証的なライフサイクル研究を行なった結果、

①児童期と青年期(0~22歳)

②成人前期(17~45歳)

③中年期(40~65歳)

④老年期(60歳~)

の4つの発達期を見いだした。

 

そして安定期と各発達期の間に5年程度の過渡期が存在すると考えた。

この不安定時期である過渡期がトランジションとなる。

心理職における専門職種との連携と協働 h28 h29 h23

 

 

ポイント

他職種による連携と協働

他職種とは

精神科であれば,医師,看護師,作業療法士精神保健福祉士臨床心理士公認心理師)など

がん医療であれば,医師,看護師,薬剤師,理学療法士,管理栄養士,臨床心理士公認心理師)など

 

連携と協働

多職種でチームを構成し,チームとして共通の目標に向かって,各職種がそれぞれの専門性をもって,お互いに連携をとりながら,患者(クライエント)を治療・援助することを指す。

 

チームが機能するためには・連携や協働をする為に重要なこと

各職種の役割が明確なことや,責任が分担されていること,専門職種として互いに尊重しあう態度があること,職種ごとのコミュニケーションがとれていることが最低限必要とされている。

 

心理職のアイデンティティ

アイデンティティ

アイデンティティとは、自分が自分であること、さらにはそうした自分が、他者や社会から認められているという感覚。

アイデンティティとは、広く知られているように、自己の斉一性と連続性、そしてそれらが他者からも同様に承認されていることである。

職業におけるアイデンティティ

この考えに則ると、職業におけるアイデンティティは、職業観や価値観に象徴され、職業人としての自己の位置づけ、目標、そしてさらには能力に関する自己理解の程度として捉えられる。個人が専門職としてのアイデンティティを確立するためには、社会や他者との関わりを通じて職業や組織に見合った役割や価値観を獲得し、それまでの「外部者(outsider) 」から「内部者(insider)」へと移行することが必要である(Wanous、1976)生涯にわたり、自分にとってその職業がどのような意味を持つのかを問い続けることが、職業人としてのアイデンティティ確立の過程であり、その過程においては、それまでの一個人としての役割や価値観に修正を加え、さらに組織や社会から期待される役割や価値観に適応していかなければならない。特に就業初期には、職業に対する期待と実際との違いに戸惑い、職業や組織への適応が困難となる「リアリティ・ショック」という現象も起こりやすい。

心理職のアイデンティティ

心理職が心理職として存在するために必要なこと。

臨床心理士の専門職アイデンティティ尺度

この尺度は、「適性と能力(7項目)」「社会貢献(5項目)」「やりがいと充実感(4項目)」の3つの下位尺度(合計16項目)からなる心理尺度。

 

心理職のアイデンティティ・専門性と独自性・心理職の基本的姿勢

 

治療的人格変化のための必要十分条件

 ロジャーズは、カウンセリングにおいて、クライィエントのパーソナリティの変容を可能にする条件として下記の6条件を示したこの6条件のうち3、4、5はカウンセラーの条件である。

 

1. 2人の人間が心理的接触を持っている

2. クライエントは傷つきやすい不一致の状態にある。

3. カウンセラーは関係の中で一致し、統合されている(自己一致)。

4. カウンセラーはクライエントに対して、無条件の肯定的配慮を経験している。

5. カウンセラーはクライエントの内的照合枠を共感的に理解し、そのことをクライエントに伝達するように努めている。

6. カウンセラーの共感的理解と無条件の肯定的配慮がクライエントに必要最小限伝わっている。

 

カウンセラーの条件・セラピストが守るべき態度

 

上記「治療的人格変化のための必要十分条件」の中の3、4、5がカウンセラーの条件にあたる。

 

自己一致(congruence) /   純粋性(genuineness)

面接中に、セラピストが抱く自分自身のさまざま感情に気づいており、自らそれを十分に受け止め、必要ならば表現できるような状態にあること。自己概念と自己経験が一致している状態。(自分自身のありのままの感情を体験し、受容している状態)

これらの3つの態度条件を揃えカウンセラーとの関係を通じて、クライエントはあるがままの自分とその間気づき(自己洞察)、あるがままの自分とその間題を受け入れ(自己受容)、より自己一致した状態に近づいていくこと(自己実現)が可能となる。ロジャーズは、来談者中心療法の最終的な目標を、自己実現したクライエントが自分自身で問題を解決していける「十分に機能する人間」になることである、とした。

 

無条件の肯定的配慮

クライエントを、ありのままで受けとめること。クライエントが矛盾した態度をとったり、負の感情を表現したり、セラピストの価値観に反した態度をとったりしたときでも、クライエントを一人の人間として尊重することが重要である。

 

共感的理解

クライエントの私的な世界をあたかも自分自身のものであるかのように感じ取ること。クライエントのものの見方や考え方の基準を意味する内的参照枠(internal frame of reference)に即して、その人の経験や感情を認識し理解していくこと。

 

心理職は実際に何をするか

4つの専門業務

臨床心理士は,4つの専門業務(①臨床心理査定,②臨床心理面接,③臨床心理的
地域援助,④これらに関する研究)が資格取得の段階で定められている。

 

臨床心理査定(心理アセスメント)

心理面接,行動観察,心理検査などの方法を通して,援助介入を効果的にするために系統的に情報収集を行っていく「心理アセスメント」業務である。

心理アセスメントは,治療の開始前のみならず,治療の経過中,治療終了後にも心理アセスメントは行われ,介入の適否や効果についてのモニタリングにも役に立つ。

 

臨床心理面接(心理カウンセリング)

現存する症状の軽減や問題となっている行動や思考パターンの修正,人格的成長の促進などを目指して実施される「心理療法・心理カウンセリング」業務である。

この業務は, 個人療法とグループアプローチに分かれている。

医療における心理療法では「さまざまな疾患や困難をもつ患者を対象とするため,危機的な状況を早期に解決するために導入されるケースから,長期にわたるケースまで多岐にわたっている。

とくに,医療現場では薬物療法を受けている患者が前提であり,治療全体の流れの中 で,心理療法がどのような位置づけか、その目標や経過について主治医をはじめとする医療スタッフと情報を共有してゆくことが重要」と述べている。

また,グループアプローチにおける目的は,同じ問題や困難を抱えた者同士が互いに協力し,語り合う過程を通して同じ悩みを 共有して自信や意欲を回復させ,コミュニケー ション能力の向上,人間関係の改善,解決方法の習得などを目指す。

 

地域援助活動

 第三の業務として,「地域援助活動」がある。 「特定の個人だけでなく,地域住民や学校,職 場に所属する人々(コミュニティ)まで拡がり, 臨床心理士に対する社会的ニーズは高まってき ている。「地域援助」の現場では,多様複雑化 する社会的背景や人間関係に関わる上で必然的 に特定の理論や技法に限定されない統合的・包 括的アプローチが求められている」と述べてお り,社会的要請に答えることが必要である。ま た具体的なアプローチの方法として,「予防教 育・心理教育,援助の動機付けを行うなどのア ウトリーチ,ニーズを把握し調整するなどのケ アマネジメント,対象者の権利を代弁する活動 であるアドボカシー,連携する他職種との間で 行われるコンサルテーション,臨床心理士と他 機関や他職種とのコラボレーション,様々な援 助支援につなげるためのコラボレーションと ネットワーキング,政策・事業の企画立案のた めの調査や研究など政策決定に影響を与える活 動」が挙げられる。

 

研究活動

 第四に,心理臨床の経験を体系化し,そのな かから新たな知見と理論を生成することを目的とした「研究活動」がある。「実証的な知見と 有効性を社会に還元することは,臨床心理士の 社会貢献の重要な役割であり,若手臨床家へ伝 えるという教育の目的も兼ね備えている」と述 べている。

 

 

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<引用文献>

医療現場における臨床心理士の役割―チーム医療での連携や協働に焦点をあてて―

https://www.tiu.ac.jp/about/research_promotion/kiyou/pdf/14_clinicalpsychology_5.pdf

臨床心理士の専門職アイデンティティとその関連要因

https://digital-archives.sophia.ac.jp/view/repository/20170110008