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隔離・拘束(Isolation/restraint)

 

 

隔離・拘束(Isolation/restraint)

 

隔離や拘束は、精神保健指定医の指示で行われる。

 

隔離

内側から患者本人の意思によっては出ることのできない個室環境に置くことである。これは、本人及び周囲のものに危険が及ぶ可能性が著しく高く、隔離以外の方法ではその危険を回避することが難しい場合に検討される。精神保健指定医の診察が必要。

 

拘束

身体的拘束は、拘束帯を使用し、胴体、四肢などをベッドに固定する。身体的拘束は行動制限の程度が強いものであり、患者の生命を保護すること及び重大な身体損傷を防ぐために行われる。

 

行動制限

具体的には、通信・面会制限、隔離、身体拘束のことである。制限の解除には具体的基準はないが、患者の人権擁護の観点から必要最小限になるように考慮されなければならない。

 

通信・面会制限

例えば、兄弟に対して被害妄想を抱いている患者と兄弟との面会を制限すること、警察に何度も訴えの電話をする患者に対して、電話制限をするなどである。

 

 

 

 

 

成年後見人・医療観察法制・司法精神医学・指定入院医療機関



 

成年後見

成年後見人制度は精神上の障害(知的障害、精神障害認知症など)により、判断能力が十分でない方が、不利益を被らないように、家庭裁判所に申し立てをして、その方を援助してくれる人を付けてもらう制度である。

 

医療観察法

医療観察法の下、医療観察制度がある。心身喪失等の状態で重大な他害行為を行なった者と裁判所が判断した場合、罪が軽減される。重大な犯罪および鑑定で心身喪失/心身耗弱と診断された者が対象。

 

医療観察制度とは、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)」に基づき、対象者に適切な医療を提供し、社会復帰を促進するために生活環境を調整することを目的とする制度のこと。指定医療機関における入院治療と、地域社会での支援である精神保健観察や通院治療からなる。

 

 

司法精神医学

心神喪失状態

 

指定入院医療機関

 

 

不眠障害(Insomnia Disorder)



 

ポイント

 

不眠障害(Insomnia Disorder)

 

不眠障害の診断基準

 

A.  睡眠の量または質の不満に関する顕著な訴えが、以下の症状のうち1つ(またはそれ以上)を伴っている:

(1)入眠困難(子どもの場合、世話する人がいないと入眠できないことで明らかになるかもしれない)
(2)頻回の覚醒、または覚醒後に再入眠できないことによって特徴づけられる、睡眠維持困難(子どもの場合、世話する人がいないと再入眠できないことで明らかになるかもしれない)
(3)早朝覚醒があり、再入眠できない。

B.  その睡眠の障害は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、教育的、学業上、行動上、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

C.  その睡眠困難は、少なくとも1週間に3夜で起こる。

D.  その睡眠困難は、少なくとも3カ月間持続する。

E.  その睡眠困難は、睡眠の適切な機会があるにもかかわらず起こる。

F.  その不眠は、他の睡眠一覚醒障害(例:ナルコレプシー、呼吸関連睡眠障害、概日リズム睡眠-覚醒障害、睡眠時随伴症)では十分に説明されず、またはその経過中にのみ起こるものではない

G.  その不眠は、物質(例:乱用薬物、医薬品)の生理学的作用によるものではない。

H.  併存する精神疾患および医学的疾患では、顕著な不眠の訴えを十分に説明できない

 

 

 

 

アルコール使用障害(Alcohol Use Disorder)/ 精神作用物質

 

ポイント

精神作用物質

摂取すると酩酊などの快反応が得られるために連用、乱用されやすく、ついにはその使用が他のいかなる行動よりも、より高い優先度を持つようになる状態、すなわち依存状態を呈するようになる薬物をいう。(アルコール、大麻を含む10種)

 

薬物依存

「生体と薬物の相互作用の結果生じた特定の精神的、時に精神的及び身体的状態をいう。また、時に離脱による苦痛を逃れるため、その薬物を連続的あるいは周期的に摂取したいという強迫的欲求を常に伴う行動やその他の反応によって特徴づけられた状態を指す。耐性はみられることも見られないこともある」とWHOが定義。

 

 

アルコール使用障害(Alcohol Use Disorder)

アルコール使用障害の診断基準

A.  アルコールの問題となる使用様式で、臨床的に意味のある障害や苦痛が生じ、以下のうち少なくとも2つが、12ヶ月以内に起こることにより示される。

(1)アルコールを意図していたよりもしばしば大量に、または長期間にわたって使用する。
(2)アルコールの使用を減量または制限することに対する持続的な欲求または努力の不成功がある。
(3)アルコールを得るために必要な活動、その使用、またはその作用から回復するのに多くの時間が費やされる。
(4)渇望、つまりアルコール使用への強い欲求、または衝動
(5)アルコールの反復的な使用の結果、職場、学校、または家庭における重要な役割の責任を果たすことができなくなる
(6)アルコールの作用により、持続的、または反復的に社会的、対人的問題が起こり、悪化しているにもかかわらず、その使用を続ける。
(7)アルコールの使用のために、重要な社会的、職業的、または娯楽的活動を放棄、または縮小している。
(8)身体的に危険な状況においてもアルコールの使用を反復する。
(9)身体的または精神的問題が、持続的または反復的に起こり、悪化しているらしいと知っているにもかかわらず、アルコールの使用を続ける。
(10)耐性、以下のいずれかによって定義されるもの:
 (a)中毒または期待する効果に達するために、著しく増大した量のアルコールが必要
 (b)同じ量のアルコールの持続使用で効果が著しく減弱
(11)離脱、以下のいずれかによって明らかとなるもの:
 (a)特徴的なアルコール離脱症候群がある
 (b)離脱症状を軽減または回避するために、アルコール(またはベンゾジアゼビンのような密接に関連した物質)を摂取する。

 

 

向精神薬とその副作用(Psychotropic drugs and their side effects)

 

ポイント

 

 中枢神経系に作用することで、精神活動に影響を与える薬物の総称を向精神薬という。抑うつ薬として現在多く持ちいられているSSRISNRIは、抗コリン作用の副作用が少ないことで知られている。抗コリン作用とは、口渇、眩しさ、頻脈、排尿困難、便秘など主に自律神経系の副作用。

 

主な向精神薬

 

抗精神病薬

有効な症状:主に統合失調症の陽性症状に有効

名称:定型抗精神病薬, 非定型抗精神病薬(オランザピン、エビリファイなど)

 

抑うつ

有効な症状:主にうつ病に有効

名称:SSRISNRIイフェクサー, 三環系抗うつ薬, 四環抗うつ薬など

 

抗不安薬

有効な症状:主に不安障害に有効

名称:ジアゼパム, ソラナックスなど

 

抗不安薬睡眠薬は、ほとんどがベンゾジアゼピン(BZD)受容

 

睡眠薬

有効な症状:不眠

名称:クアゼパムなど

 

 

 

気分安定薬

有効な症状:主に双極性障害に有効

名称:炭酸リチウム, カルバマゼピンなど

 

 

主な向精神薬の副作用

 

抗精神病薬

定型抗精神病薬

錐体外路症状ジスキネジア)、過鎮静(眠気、ふらつき、ぼーっとする)、自律神経症状(低血圧口渇、鼻閉)、消化器症状(便秘イレウス(腸閉塞))、肝障害、内分泌症状(月経異常、乳汁分泌、肥満、血糖値上昇(特に否定型血))まれに悪性症候群錐体外路症状、自律神経症状などの併発。薬物療法を一時中断する)

 

非定型抗精神病薬
セロトニンドパミン遮断薬

乳汁分泌、月経異常、射精不能

多元受容体標的抗精神病薬

体重増加、脂質異常、血糖上昇、過鎮静

ドパミン受容体部分作動薬(エビリファイなど)

不眠、不安、胃腸症状

 

抑うつ

三環系抗うつ薬

口渇、便秘、尿閉(抗コリン)、起立性低血圧、過鎮静、体重増加

四環抗うつ薬

三環系抗うつ薬よりもやや弱い副作用(口渇、めまい)、眠気はやや強い

SSRI

悪心・嘔吐性機能低下(射精遅延)、賦活症候群(神経過敏、不安、焦燥)、まれにセロトニン症候群(自律神経症状、精神・運動症状の併発。薬物療法を一時中断する)

 

SNRI

悪心、動悸・頭痛血圧上昇・不眠・排尿困難(尿閉、賦活症候群(神経過敏、不安、焦燥)

 

 

抗不安薬全般

眠気、ふらつき・脱力、依存性、中断・減量による離脱症状離脱症状としては、悪心、嘔吐、振戦、けいれん発作などがある。

 

睡眠薬

過鎮静、ふらつき、車の運転などの操作能力の低下。中断・減量による離脱症状離脱症状としては、悪心、嘔吐、振戦、けいれん発作などがある。

 

 

炭酸リチウム

振戦・脱力・倦怠感、消化器症状(嘔気、嘔吐、下痢)、急性リチウム中毒(意識障害、けいれんなど)

 

中枢神経刺激薬

 

他の向精神薬としては、中枢神経刺激薬(メチルフェニデート塩酸塩)が挙げられる。主にAD/HDの多動性・衝動性に対して処方される。ただし、不眠、食欲低下、不安増大、神経過敏、眼圧亢進、頭痛、口渇などの副作用がある。メチルフェニデートは依存形成をきたすことがあることから、アトモキセチンがAD/HDに処方されることも多い。こちらの副作用として、嘔気、食欲減退、傾眠などが生じうる。

 

認知症

また、抗認知症薬として処方されるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬がある。認知症の改善効果ではなく、症状の進行を抑制する目的で使用される。めまい、眠気、集中力の欠如などの副作用があるだけではなく、高齢者は眠気に伴う転倒のリスク等もあるため、少ない投与量から開始し、慎重に増やしていくなどの配慮・工夫が必要。

 

 

錐体外路症状

アカシジア

四肢に生ずるむずむずする異常知覚により、四肢を落ち着きなく動かしてしまい、長時間座っていることが困難になる。静座不能症とも呼ばれる。

 

ジストニア

不随意で持続的な筋収縮・緊張に関する運動障害。顔や首のこわばり・反り返り、舌が出たままになる、眼球上転、手足が突っ張るなど。

 

ジスキネジア

反復性で無目的で自発的な運動。口をもごもごする、唇をすぼめる、歯を食いしばる、手足が勝手に動くなど。

 

パーキソニズム

振戦(手足のふるえ)、筋肉のこわばり、緩慢動作、歩行障害など

 

 

問題

[1]

向精神薬とその副作用の組み合わせで、正しいものを2つ選べ。

抗不安薬 ー 身体依存
②炭酸リチウム ー 甲状腺機能亢進症
③非定型抗精神病薬 ー 体重減少
メチルフェニデート ー 食欲亢進
⑤選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI) ー 賦活症候群

 

 

解答

[1]

○ ①抗不安薬は精神依存がメインだが、身体依存も形成される。
×  ②炭酸リチウムの使用により、甲状腺機能が低下することはあるが、甲状腺機能亢進症(パセドウ病)が発生することは知られていない。
×  ③抗精神病薬は食欲が亢進しやすく、体重増加が発生しやすい。
×  ④メチルフェニデートはかなり強い精神刺激薬で、覚醒剤にも似た副作用が生じるとされている。食欲は不振になりやすく、体重減少も発生しやすい。
○ ⑤SSRIによる抑うつ作用により、不安・焦燥感・衝動などが現れやすく、そのような中枢刺激性の症状を総称して賦活症候群と呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

精神保健福祉法(Act on Mental Health and Welfare for the Mentally Disabled)

 

ポイント

 

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

精神保健と精神障害者福祉について規定した日本の法律である。精神保健福祉法と略される。目的は、精神障害者の医療・保護、その社会復帰の促進・自立と社会経済活動への参加の促進のための必要な援助、その発生の予防その他国民の精神的健康の保持及び増進により、精神障害者の福祉の増進・国民の精神保健の向上を図ることにある

 

精神保健指定医(Designated Physicians of Mental Health)

 

精神保健指定医とは、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律精神保険福祉法)第18条に定める、医師の国家資格である。単に「指定医」とも。精神医療における非自発入院の判定を独占的に行える者とされている。

 

 

精神保健福祉法に基づく精神科の入院形態

 

自発的入院

任意入院

精神保険福祉法では任意入院と言われる。主に開放病棟で治療が行われる。本人が入院に同意することが条件である。

→本人の同意

 

 

非自発的入院

 

非自発的入院には、医療保護入院、応急入院、措置入院、緊急措置入院が該当する。

 

医療保護入院

家族等の同意と精神保険指定医の診察に基づいて、本人の意思によらず、強制的に入院させる制度。

家族の同意+精神保健指定医

 

措置入院

自傷他害のおそれがある精神障害者都道府県知事の権限で精神科病院に強制的に入院させる制度。精神障害の疑いがある者を発見した者の通告ののち、2名以上の精神保健指定医の診察を行い、措置入院が必要と判断が一致したら、入院させることができる。

行政+自傷他害の恐れ+精神保健指定医精神保健指定医

 

緊急措置入院

精神障害者による突発的な事故や自殺を防ぐため急を要し、正規の手続き省略して1名の精神保健指定医の診察で72時間に限り入院させることができるのが緊急措置入院である。

行政+自傷他害の恐れ+精神保健指定医+72時間以内

 

応急入院

72時間に限り、家族等に連絡が取れない、かつ自傷他害のおそれがない場合は、本人の同意がなくとも応急入院指定病院に入院させることができる。

上記のどれにも該当しないが誰かの依頼あり+精神保健指定医+72時間以内

 

 

問題

 

[1]

  精神保健及び精神障害者福祉に関する法律精神保健福祉法〉に基づく処遇について、正しいものを2つ選べ。
措置入院では手紙の発信が制限される。
② 任意入院の際は精神保健指定医の診察を要しない。
③ 患者を隔離する際は精神保健指定医の診察を要する。
④ 治療上の理由があれば、複数の患者を同じ病室に隔離することができる。
⑤ 身体的拘束を行った場合は、身体的拘束を行った旨、身体的拘束の理由、開始と解除の日時などを精神保健指定医が診療録に記載する。

公認心理師試験 第1回 問58)

 

解答

 

[1]

2, 3, 5  ※公式の発表により正答が3つであるとされた。

 

1, × の外部との通信については、医療保護入院措置入院はほぼ同一で、電話や面会は必要に応じて制限できる。一方、手紙については一切制限できない。

2,   ○任意入院は本人の意思・同意によるので、精神保健指定医の診察は不要。

3,   ○患者の隔離・行動制限などの場面では、精神保健指定医による判断が必要。

4,    ×複数の患者を同じ病室に隔離するのは危険と考えるのが自然。

5,   ○身体拘束は漫然と行われると重大な人権侵害となるため、必要性の十分な検討が必要であるとともに、記録を残すことが必要である。

 

心理系大学院への進学に関するアンケート

 

 

Q.1<大学院進学を決めたのはいつ?>

「大学3年後期のとき」

 

Q.2<なぜ院進しようと考えたか?>

公認心理師の資格を取るため」

 

Q.3<院進した大学院は内部生であったか?>

「外部生」

 

Q.4<今の大学院を選んだ理由>

「医療領域を目指していたことから、付属病院があるところを選んだ」

 

Q.5<大学院入試についてどんな対策をしたか?>

「やれることは全部やった。有斐閣の本を知識のベースとして過去問を解いた。まずは、選択式や穴埋めの問題から取り組み、知識の土台を作った。その後、記述式の問題に取り組んだ。」

 

Q.6<大学院入試においてしておいてよかった対策は?>

「大学院に所属している教授の研究論文に目を通しておく。また、その大学院に影響力をもつ人物がいる場合、その人の専門についても捉えておく。」

 

Q.7<大学院に進む上での適性について>

「知識的な力は必要。その上で、何を言われても折れない心が大切。」

 

Q.8<大学院における一週間スケジュールの例>

(月)     2-4限授業、5限ゼミ

(火)     3限授業、その後課題や発表の資料作成

(水)     2限SV、4-5限プレイセラピーなどの実習

(木)     1日学外実習

(金)     1-4限授業

(土日)  研究会へ参加、学外実習のレポートやゼミの資料作成、検査の予習等