ジェームズ=ランゲ説(James-Lange Theory) / キャノン=バード説(Cannon-Bard Theory)
ポイント
□ジェームズ=ランゲ説
身体的生理的変化が感情体験を引き起こすと考える感情についての理論である。抹消起源説とも呼ばれる。
外的な刺激によってまず生理的変化が生じ、その変化を脳が受信することで情動が生じる。「人は悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しい」という言葉のように、内臓や骨格筋といった末梢器官の変化を知覚することによって感情体験がもたらされると考えるのはジェームス=ランゲ説である。
□キャノン=バード説
中枢起源説とも言われる。刺激状況の情報が視床に入ってこれを興奮させ、その情報が抹消器官と大脳皮質に伝わることによって、抹消器官(内臓や骨格筋)の身体的生理的変化と大脳皮質での感情の体験が独立に生じると言うものである。
確認問題
[1]
括弧に適切な語句を記入しなさい。
情動体験と身体的反応の関係には、情動体験が身体反応を引き起こすという( 1 )説と、身体的反応が情動体験を引き起こすという( 2 )説がある
(桜美林大学大学院 心理学研究科 臨床心理学専攻)
[2]
情動の末梢起源説(ジェームス=ランゲ説)についての記述として、最も適切なものを一つ選びなさい。
1.ある刺激が大脳皮質において知覚されると、身体に変化が生じ、その身体の変化が脳に伝えられ知覚されたものが情動の経験である。
2.情動の経験と身体反応は同時に、かつ独立に生じる。
3.恐れ、怒り、肉体的負荷など、さまざまな原因により交感神経系の活性化という同じ反応が生じる。
4.緊急時には交換神経を中心に闘争・逃走反応と一定の身体反応が生じる。
5.ある刺激によって生じた生理的覚醒に対して、認知のはたらきにより、何が原因であるかというラベルづけが行われ、これにより情動を体験する。
(帝京平成大学大学院 臨床心理学研究科 臨床心理学専攻)
[3]
感情や情動が生起するプロセスに関する次の2つの古典的学説について、その違いを明確にしながら説明しなさい。
James-Lange説、Cannon-Bard説
(名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 人間文化専攻)
解答
[1]
1、キャノン=バード
2、ジェームズ=ランゲ
[2]
1
[3]
抹消起源説(ジェームス=ランゲ説)は、身体感覚(生理的変化)が生じない限り、情動も発生しないとする。ある外部刺激はまず大脳の感覚皮質で受け取られる、そして付随意的に運動皮質に伝わり震えなどの身体反応を起こす。身体反応が再び感覚皮質に届けられ恐れなどの情動を生じると考える。一方、中枢起源説(キャノン=バード説)は、ある外部刺激はまず脳の視床を通過し、2つに分岐する。片方は感覚皮質へ到達し、恐れなどの情動を生じる。もう片方は視床下部に到達し、そこで、震えなどの体の生理的変化を起こすと考える。
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