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性格の類型論と特性論

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 これまでの性格研究の流れは、大きく2つに分かれる。その一つは、類型論(typology)と呼ばれるものであり、人をいくつかのタイプに分類して理解しようとする立場である。この流れは精神医学を出発点としており、よく知られているのはクレッチマーの体型説である。

    ドイツの精神科医クレッチマー(Kretschmer , E.)の類型説は,精神病患者の臨床的観察に基づいて提唱されたものである。クレッチマーの体型説では、精神病患者の体型の違いに注目し,躁うつ病(気分障害)の患者には肥満型の人が多く,分裂病(統合失調症)の患者には細長型の人が多く、 てんかん (神経系の疾患) の患者には闘士型の人が多いことを示した。さらに,彼は患者の病前の性格を調べ、一般の人の性格を躁うつ気質、分裂気質、てんかん気質の3類型に分類した。

 

    彼は、分裂病躁うつ病とその患者の体型の間には一定の関係があることを見出した。また、患者の発病前の性格について調べると、そこにも一定の関係がみられた。 後にてんかんの患者の体型にも、前の2つの患者ほど明確ではないが関係がみられた。すなわち、分裂病やそれに近い性格の者には細長型の体型が多く、その特徴は臆病、はにかみなどである。同様に、躁うつ病およびてんかんについても、表に示したような関係があるという。

 この他にもユングの外向型・内向型分類といったいろいろな類型説がある。

    ユング (Jung, C. G.) は, 精神分析学的見地から、リビドー(心的エネルギー)の向かう方向によって,内向型と外向型の2類型を区別した。すなわち, 内向型の人は,主として自己の内界に関心があり,外向型の人は, 自己よりも外部の世界に関心があるといえる。さらにユングは,その下位分類として,思考-感情(合理機能),感覚-直観(非合理機能) という4つの心理機能があるとし, これらの組合せによって意識水準で優位な活動が決定されると考えた。

 

    身体的ないし生理的な特徴に関連づけた説と、そうでない説とに分かれる。いずれにしても人を独自な全体としてとらえ、初めから分析的にみようとしない点に特徴がある。 私たちが日常生活で問題にする性格はこのようなおおまかなタイプ分けが普通であり、今日でも血液型による性格診断を信じる人がいるのもそのためである。

 類型説については、データの取り方や統計的処理などが適切になされているとは限らず、確かなものとはいえないという見方もある。また、クレッチマーの場合のように,病的な性格から普通の人の性格を推測しており、本来それらは程度の違いとみなしてよいものかどうかについても疑問が持たれる。質的に異なるのであれば、このような推測はあたらないことになるからである。

 

□特性論

 

一定の行動傾向のことを特性と言い、特性の量的な差異によって性格を記述する考え方を特性論という。

類型説が主としてドイツで発達したのに対して、これはアメリカやイギリスで唱えられた。 イギリスのアイゼンク (1960)は、個別的反応から、習慣的反応の水準を経て、特性の水準に至り、最後に類型の水準に達するという、性格の4層構造でできていると唱えた。たとえば、子どもが飽きることなくパズルを解いているという日常生活での反応が個別的反応であり、パズルに限らず飽きにくい習慣があるとすれば、それが習慣的反応である。このような習慣的反応は数え方によっては数が多くて、多種多様であろう。そこで因子分析という統計的方法によって似たものをまとめるという方法がとられた。アイゼンクは神経症患者を対象にした分析から、内向ー外向、神経症傾向、精神病傾向の3つの次元を見出した。このうちの内向ー外向の次元には、持続度から感じやすさまでの5つの特性が含まれることが明らかにされている。

 この他にもいろいろな特性論があるが、抽出された因子は必ずしも一致しておらず、一つの難点になっている。