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プレマック(Premack, D.)の心の理論(theory of mind)

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ポイント

動物学者のプレマック(Premack, D.)が提唱した概念。

ヒトや動物が他者の「こころ」の状態(目的、思著、意図、信念など)を理解し推量する働き。およそ3歳頃から成立すると考えられている。

 

誤信念課題(false-belief task)

こころの理論が発達しているかどうかを調べるための課題。この課題に正答することで心の理論があると判断する。サリーとアンの課題・スマーティ課題・マクシのチョコレート課題とあるが、扱う物品が違うだけで課題内容は同じである。

 

自閉症と心の理論の関係

通常、誤信念課題に正答するのは健常児の場合3-4歳児以降であるが、健常児、自閉症ダウン症の3グループの子どもに誤信念課題を実施すると、自閉症児は誤信念課題に正答することができなかった。この結果から、自閉症児は「こころの理論」に障害があることが示唆される。(心の理論障害仮説)

 

cf.

心の理論は、前頭葉機能(frontal lobe function)と関連がある

 

 

ダウン症(Down syndrome)

21番染色体が突然変具によって1本余分に存在し、計3本(トリソミー症)持つことによって発症する先天性の疾患群。知的障害、先天性心疾患、低身長、肥満、筋力の弱さ、眼科的間題、難聴等の症状が現れる。

 

確認問題

[1]

「心の理論」の記述について、適切でないものを一つ選びなさい。

1.「サリーとアンの課題」は、自閉症児もダウン症児もほぼ4歳ごろまでにクリアできる。

2.誤信念課題とは、子どもが他者の考えや信念を推量できるか否かを調べる課題である。

3.自閉症児は他者との相互的なやりとりに障害をもつので、誤信念課題を理解することが難しい。

4.他者の心の状態を理解し推量する働きを比喰的に「心の理論」と呼んだ。

5.心の理論を獲得するようになるためにはメタ認知の発達が関係している。

帝京平成大学大学院 臨床心理学研究科 臨床心理学専攻)

[2]

「こころの理論」について次の問いに答えよ。

(A)この理論に最も関連の深い事項を一つ選べ。

a:誤信念課題

b:意識の流れ

c:保存課題

d:対象の永続性

(B)この理論の説明として誤っているものを一つ選べ。

a:ヒトや動物が他者の心の状態を理解、推量する働きのこと。

b:健常児の場合、4歳位から次第に他者の気持ちが理解できるようになっていくという。

c:自閉症児はの理論を持つのが難しいといわれる。

d:言語能力やIQを同等に5〜6歳児にあわせた場合でも、ダウン症児は心の理論を持つのが難しいといわれる。

駒沢女子大学大学院 人文科学研究科 臨床心理学専攻)

[3]

以下のア)からオ)は、乳幼児期についての記述である。正しいものには○を、間違っているものには×をつけよ。

ア)新生児は、誕生直後から積極的に母親と相互的なやりとりをしようとする。

イ)視覚や聴覚機機能は、出生後にはじめて働き始める。

ウ)12ヶ月児は、視覚的断崖に面しているとき、そこを横断することが安全かどうかを、対面にいる母親の表情を参照して判断することができる。

エ)ピアジェ(Piaget, J.)は、三つの山問題とよばれる課題を考案し、幼児は自分中心のわがままな欲求をもつことを見いだし、自己中心性とよんだ。

オ)「心の理論」は、幼児期に芽生え発達すると考えられている。

帝塚山学院大学大学院 人間科学研究科 臨床心理学専攻)

 

[4]

“サリーとアンの誤信念課題 "は、どのような考えに基づいて作られた、何を調べる課題かを説明しなさい。

名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 人間文化専攻)

 

[5]

「心の理論」とは何か。「心の理論」を獲得しているか否かを調べる具体的な実験・課題の例を一つ挙げて説明しなさい。

静岡大学大学院 人文社会科学研究科 臨床人間科学専攻)

 

解答

[1]
1

 

[2]

(A) a 

(B)   d

 

[3]

ア)○

イ)×

ウ)○

エ)×

オ)○

 

[4]

 “サリーとアンの誤信念課題 "は、こころの理論の発達を調べる課題である。この課題は、幼児期後期(3~6 歳)より子供は他者には自分と異なる感じ方や考えがあるのだということを理解できるようになるという考え(他者視点能力の獲得)に基づいている。

 

[5]

ヒトや動物が他者の「こころ」の状態(目的、思著、意図、信念など)を理解し推量する働き。およそ3歳頃から成立すると考えられている。具体的な実験・課題にサリーとアン課題がある。これは、サリーとアンは最初、同じ部屋にいる。部屋にはサリーのバスケットとアンの箱が置かれている。サリーがビー玉をバスケットに入れる。そしてサリーは部屋の外に出ていき、その間にアンがビー玉を自分の箱に移動する。最後にサリーが部屋に戻ってきて、ビー玉を取り出そうとする。そして、子どもに「サリーがどこを探すと思うか(信念質問)」、「ビー玉は今どこにあるか(現実質問)」および「最初にビー玉はどこにあったか(記憶質問)」を聞く。3歳児の多くは前者の問に箱と答えるが、4~5歳児はバスケットと答える。これは3歳児にとっては、自分が見て知った現実(ビー玉は今、アンの箱にあるという現実)と、サリーの信念(ビー玉はバスケットに入れておいたというサリーにとっての現実)が異なることを理解するのが難しいために起こる。