ポイント
マーラー(Mahler, M.)は、分離個体化理論(separation individuation process)を提唱した。
正常な自閉期(0~1ヶ月)
自己と他者の識別がなく、欲求が内部で全面的に満たされる。
正常な共生期(2~5ヶ月)
内部と外部の識別が生じるが、母親とは全能的な一体感を持つ。
分離個体化期(6~36ヶ月)
母子一体の分離が行われる時期で、以下の4つに下位区分される。
①分化期(6~10ヶ月)
自他の区別が可能になり、母親と他人、見慣れたものと見知らぬものとを比較し、人見知り反応が始まる。つまり、母親との分化が進み、自他の区別ができるようになる。この現象をハッチング(孵化)という。
②練習期(10~16ヶ月)
身体的成熟によって、這う、膝へのよじ登り、つかまり立ちが可能となる初期練習期と、自由に直立歩行が可能となる固有の練習期に分けられる。母親から一時的に離れては遊び、また母親の下に戻り、あたかもエネルギーを補給してまた離れるという分離を練習する時期です。
③再接近期(16~25ヶ月)
自由な一人歩きが可能となり、身体分離が意識され、自由に移動できる喜びを感じるとともに、分離不安や見捨てられ不安が生じ、これらの不安を解消するために、母親へのしがみつきなどの再接近が生じる。この時期に、見捨てられ不安が解消されないと、境界性パーソナリティ障害という形で再燃する。(第二の分離個体化のプロセス)
④個体化期(25~36ヶ月)
個の確立と情緒的対象恒常性の萌芽期である。幼児は、再び母との分離が受け入れ可能となり、さらに一層耐えられるようになる。これまでの原初的な対象関係、すなわち、さまざまな属性に基づいて別々な母親(良い母親、悪い母親)として表象として関係を心の中に作り上げるという部分対象関係を乗り越えて、母親という一個の人間を統合して母親表象が確立する。つまり、情緒的な対象恒常性が発達する。幼児は母親と離れていても、心の中に自分を支えてくれる母親像を持っているため、安定して母親の元を離れることができるようになる。
cf.
第2の個体化
Blosは、中学・高校生の時期を含む青年期を、青年期は親から心理的に離れ、自立し、個を確立し、内在化された幼児対象からの独立をめざす時期とし、マーラーの乳幼児期の分離一個体化になぞらえて「第二の個体化」と名付けた。
確認問題
[1]
括弧に入る語を答えなさい。
自由な一人歩きが可能になった幼児が外界への関心を高めて母親から分離する一方、そこで出会う不安を解消すべく、母親から飛び出したり、母親のもとへ飛び込んだりを繰り返す時期がある。生後15カ月から24カ月頃に見られるこの時期を、マーラー(Mahler、M.)は(1)期と呼んだ。
(帝塚山学院大学大学院 人間科学研究科 臨床心理学専攻)
[2]
マーラー(Mahler、M. S.)は、母子の関係性の発達を分離一個体化のプロセスで説明し、分離一個体化の成功により、(1)が獲得されるとした。
(目白大学大学院 心理学研究科 臨床心理学専攻)
[3]
分離個体化について、関連の深い人物を選択しなさい。
1、Gesell 2、Erikson 3、Jensen 4、Mahler
(静岡大学大学院 人文社会科学研究科 臨床人間科学専攻)
[4]
下記の用語について簡潔に説明しなさい。
・object constancy
(静岡大学大学院 人文社会科学研究科 臨床人間科学専攻)
解答
[1]
1、再接近
[2]
1、対象の恒常性
[3]
4
[4]
マーラー(Mahler,M.S.)の分離・個体化理論(separation-individuation theory)において、愛情対象としての母親イメージが心の中に持てるようになることを対象の恒常性という。