メラニー・クライン(Klein, M.)
ポイント
メラニー・クライン(Klein, M.)は、ウィーン生まれの精神科医。対象関係論の創始者。
対象関係論は、乳幼児期における重要な他者(特に母親)との関係(対象関係)を重視し、子供が自分の内的世界に母親イメージを取り入れる過程と、そのイメージ(内的対象)との関係性という観点から、パーソナリティの理解や精神病理の治療のために構築された理論のこと。
原始的防衛機制
原始的防衛機制は、フロイトが提唱した防衛機制が成立する以前のまだ自我が未熟な水準の時期に使用する防衛機制。メラニー・クラインが提唱した。万能的な世界に入り、自分の都合のよいように対象をコントロールし続けたり、対象を理想化し続けたりするなど、自我が未発達な乳幼児や境界性パーソナリティ障害患者に見られる。原始的防衛機制の発動は情緒体験を閉ざし、内的な心の成熟を妨げたりすると考えられている。
分裂(splitting)
対象や自己についてよい幻想と悪い幻想を別個のものとして認知すること。
ex.
生後1歳前後の乳児が不快な環境におかれたとき、環環境としての母親に対する怒りと恐怖が激しくなる。このとき、目の前にいるのは悪い母親であり、よい母親は別に存在すると空想する。
投影性同一視(projective identification)
自己の心の一部を対象に投影し、その対象との関係の中で投影された一部を操作しようとすること。
ex.
自己嫌悪を感じている患者が、その自己嫌悪を医師に向け、医師に対して「あなたは自分勝手だ」と非難する。(これによって医師は実際にその患者に対して憎しみや怒りを感じるようになる)。
否認(denial)
不安や苦痛に結びついた現実を否定し、目をそらす。
ex.
約束したのを忘れたときに、「そんな約束はしていない」と言い張る。
原始的理想化(primitive idealization)
ある対象をすべてよいものとみなし、悪い部分や劣った部分を否認すること。
ex.「あばたもえくぼ」
価値切り下げ(devaluation)
理想化が崩れたときに、その対象に対して激しい怒りを感じ、全く価値のない存在だと過小評価をする。
ex.
第一希望の企業が不採用になったとき、その企業に対してよくない事柄をあげつらい「不採用になってよかった」と思い込む。
操的防衛(manic defense)
精神的苦痛から逃れるために現実を否定し、無理に元気を出したり活動的になる。万能感、とくに対象のコントロール、脱価値化(軽蔑感)、対象への勝利感、征服感といった心的活動や情緒から成り立っている。
ex.
夫婦げんかをしている親を見て、子どもがおどけてみせる。
妄想分裂ポジションと抑うつポジション
クラインは、発達段階としては捉えず、進歩や逆行を繰り返すという意味でポジション(態勢)という念を使用した。心の健康とは、以下の2つの整勢を相互に移行しながらも抑うつポジションにより多くとどまれることである。
妄想一分裂ポジション(paranoid-schizoid position)
時期は、0〜3ヵ月。対象関係は部分対象。常に自分が迫害を受けているのではないかという気持ちに苛まれ、周囲を敵か味方かに決め付けた関係を経験する。
対応する防衛機制は、分裂、原始的理想化、投影性同一視、価値切り下げ。
抑うつポジション(depressive position)
時期は、3〜24か月。対象関係は全体対象。罪責感や心の痛みを感じることができる、現実的に物事を見ていく心の状態。
対応する防衛機制は、操的防衛。
遊びについての考え方
子どもは幻想や願望など遊びを通して表現することができるので、大人の精神分析における夢や自由連想の解釈と同じように、子どもの遊びの解釈することができる。
確認問題
[1]
空欄に最も適切な語あるいは人名を答えなさい。
置き換え、反動形成などの神経症的防衛機制に対して、分裂、投影同一化、梁的防衛などを(1)的防衛機制という。
(帝塚山学院大学大学院 人間科学研究科 臨床心理学専攻)
[2]
次の文章を読み、正しいものを○、間違っているものを×として答えなさい。
・Aメラニー・クライン(Klein、M.)は乳児の主観的世界を探索し、内的対象関係が現実性を持つとして重視した。
(立正大学大学院 心理学研究科 臨床心理学専攻)
[3]
遊戯療法に関する次の記述について、適切なものに○を、適切でないものに×をつけなさい。
・Klein, Mは、遊びを自由連想や夢の代わりとして、精神分析理論を自由遊びに適用しようとした。
(淑徳大学大学院 総合福祉研究科 心理学専攻)
解答
[1]
1、原始的
[2]
○
[3]
○