ポイント
社会的学習理論は、認知的要因が行動の生起に影響を与えるという考えをもつ。
社会的学習理論(モデリング理論)とは、人は自身の体験だけでなく、他者の行動を観察・模倣すること(=モデリング)によっても学習する、とした理論である。
観察学習(モデリング)
直接強化をしなくてもモデルの行動を観察しただけで起こる学習を観察学習という。これについては、大人の男性が人形を殴ったり蹴ったりした後で、別の大人に叱られている映像を見たときに、子どもを人形がいる部屋に連れて行っても、人形に攻撃しなかったという実験結果で知られている。ここでモデルの反応に対する強化や罰を代理強化・代理罰という。
観察学習(モデリング)の過程には次の4つがある観察者がモデルの行動へ注意を向ける過程(注意)、観察したことを記憶として取り込み保持する過程(保持)、記憶しているモデルの行動体型を再生する過程(運動再生)、これらの3つの過程を動機づける過程(動機づけ)である。
模倣学習
モデルの行動を模倣し、強化を受けて学習することを模倣学習という。
確認問題
[1]
観察学習における「代理強化」を簡潔に説明しなさい。
(名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 人間文化専攻)
[2]
バンデューラは、観察者はモデルの行動の観察のみで学習効果があることを発見した。これを(1)という。また、モデルを強化すると観察者も間接的に強化される。これを(2)という。
(桜美林大学大学院 心理学研究科 臨床心理学専攻)
[3]
括弧に入る適切な語を答えなさい。
バンデューラは(1)を提唱した。(2)は直接的な経験による学習であるのに対して、(1)は(3)を通した間接的な経験による学習である。見ることを通してその行動への動機づけが高まることを(4)という。また、人間は他者からの強化がない状況でも、自分でコントロールできる賞罰によって自分自身の学習を促進することができ、これを(5)とよぶ。
(神奈川大学院 人間科学研究科 人間科学専攻 臨床心理学研究領域)
[4]
下記の用語を簡潔に説明しなさい。
・Bandura, Albert
・社会的学習理論
(静岡大学大学院 人文社会科学研究科 臨床人間科学専攻)
解答
[1]
直接強化していなくても、モデルの行動を観察したことよりオペラント行動の発生頻度が増加した場合を、代理強化という。また減少した場合は代理罰である。
観察学習は、大人の男性が人形を殴ったり蹴ったりした後で、別の大人に叱られている映像を見たときに、子どもを人形がいる部屋に連れて行っても、人形に攻撃しなかったという実験結果で知られている。
[2]
1、モデリング
2、代理強化
[3]
1、モデリング
2、条件付け
3、モデル(観察)
4、代理強化
5、自己強化
[4]
Bandura, Albertは、カナダ人の心理学者で、自己効力感や社会的学習理論を提唱した。
バンデューラ(Bandura)が提唱した社会的学習理論は、認知的要因が行動の生起に影響を与えるという考えである。また、バンデューラは行動変容においては、個人がある状況において心要な行動を効果的に遂行できる可能性の認知、つまり自己効力感(self-efficacy)が重要であることを示した。 自己効力感が強いほど実際にその行動を遂行できる傾向にあるという。さらに観察学習はバンデューラが唱える社会的学習理論の中心要素をなし,観察学習が成立するには,注意,保持,再生,動機づけの四つの過程が必要であるとした。