P-Fスタディ(Picture Frustration Study)/ フラストレーション(frustration)
ポイント
人の欲求不満への対処の仕方に注目し、パーソナリティ研究を行ったのが、P-Fスタディの開発者のローゼンツァイク(Rosenzweig,S.)であった。ローゼンツァイクは、抑圧などの精神分析概念を実験的手法で明確化することに関心をもち、特に、人は欲求不満を感じたときにどのように対処しアグレッションがどのように表れるのかについての研究を行った。当初は、行動面の検査や質問紙検査などいくつかの手法も用いていたが、漫画風に描かれた欲求不満場面におけるイラスト人物がどのように答えるのかを尋ねる投映法の形式が最も有効であるとの結論に達し、その後、この投映法的アプローチのみが単独で使用されるようになった。最初の1945年版は、18歳以上を対象とした成人用であったが、その後、1948年に4歳から14歳を対象とした児童用が作成され、また1976年に、12歳から18歳を適用年齢とした青年用が作成された。わが国では、1955年に林勝造によってP-Fスタディの解説手引書が刊行されたのにはじまり、1956年に児童用が、そして1957年に成人用が発表されている。P-Fスタディは、検査刺激が漫画風であるため、子どもから大人まで、どの年齢層にも関心をもってもらいやすい検査である。また検査の所要時間が20〜30分程度と比較的短時間であり被検者に大きな負荷を与えることなく施行できる。一般に、投映法は検査者の主観によって、結果の解釈が左右されやすいという欠点が指摘されるが、P-Fスタディは、投映法でありながら、数量化された客観的な指標を用いた分析が可能である。パーソナリティを包括的に査定する検査ではないものの、個人の特性が最も表れやすい対人関係と、そこで表出されるアグレッションを査定対象としているため、パーソナリティ検査としての妥当性・有効性が認められ今日まで、多くの研究が積み重ねられてきている。
型(パターン)と方向(3×3の9タイプ)
攻撃性の型
・障害優位型:障害状況や障害による苦痛などを言及する間接的な型
・自我防御型:自我防衛的な障害もたらす環境や他者に対する直接的な型
・要求固執型:障害や障害により生じた問題の解決、解消に重点をおく型
攻撃性の方向
・他責的反応:欲求不満を生じた原因を環境や他者に帰属させる反応
・自責的反応:欲求不満を生じた原因を自己の責任に帰属させる反応
・無責的反応:欲求不満をごまかす・取締うなどにより攻撃性をどこにも向けない反応。攻撃性の表出を回避・抑制する。
cf.
フラストレーション耐性(frustration tolerance)
ローゼンツァイクが提唱。フラストレーション状況に耐える能力のこと。フラストレーション耐性には個人差があり、子どもの頃から適度なフラストレーションを経験すると、フラストレーション耐性は高くなると考えられている。
フラストレーション反応
攻撃
ミラーとダラードによるフラストレーション攻撃仮説。攻撃性は、フラストレーションの原因となった対象や自分自身、あるいは無関係のものに向けられる。
迂回行動
欲求を阻害する障壁を避けて目標に到達すること。おもちゃを買ってほしいけど、母親に断られたのでおばあちゃんにねだって買ってもらうなど。
退行
発達以前の段階の行動様式に戻ること。妹や弟が生まれたときに赤ちゃん返りをするなどがその一例。
固着
フラストレーションを感じると、不適切な行動パターンを異常に持続させるというの。無気力で無活動になったり、無意味な反復行動に逃避するなどがある。
確認問題
[1]
P-Fスタディについて簡潔に説明しなさい。
(名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 人間文化専攻)
[2]
以下の文章を読み、空欄に入れるのに最も適切だと思われる語句を記述しなさい。
ダラード(Dollard, J.)やミラー(Miller, N. E.)らは、フラストレーション(欲求不満)場面における人間の典型的な反応は(1)であるとした。
(帝塚山学院大学大学院 人間科学研究科 臨床心理学専攻)
[3]
P-Fスタディの実施と解釈について、正しいものを1つ選べ。
① 葛藤場面は、自我の退行場面と超自我が阻害される場面とで構成される。
② 攻撃性の方向が内外ともに向けられずに回避される反応を無責傾向と解釈される。
③ 依存性と攻撃性の方向とパターンを分類及び記号化して、社会的関係の特徴を把握する検査である。
④ 他者との葛藤状況における言語反応を、愛着関係の方向とパターンとに分類及び記号化して解釈する。
⑤ 欲求不満を来す状況について、もしも自分であったらという想定における被験者の言語反応を分類及び記号化して解釈する。
(公認心理師試験 第1回 問17)
解答
[1]
ローゼンツァイク(Rosenzweig,S.)人の欲求不満への対処の仕方に注目し、P-Fスタディを開発した。漫画風に描かれた欲求不満場面におけるイラスト人物がどのように答えるのかを尋ねる投映法である。検査の所要時間が20〜30分程度と比較的短時間であり被検者に大きな負荷を与えることなく施行できる。一般に、投映法は検査者の主観によって、結果の解釈が左右されやすいという欠点が指摘されるが、P-Fスタディは、投映法でありながら、数量化された客観的な指標を用いた分析が可能である。
[2]
攻撃行動
[3]
2
① 葛藤場面は、各場面は「自我阻害場面」と「超自我阻害場面」である。
③ ×依存性と攻撃性の方向とパターン(型)→攻撃性の方向とパターン(型)
④ ×愛着関係の方向とパターン→攻撃性の方向とパターン(型)
⑤ 登場人物への無意識的な投影を想定しているため、「もしも自分であったら」といった教示はない。