
ソクラテス式問答法・拡大的な質問法
サマリー
ソクラテス式問答法は、クライエントに幅広い角度から多様で創造的な発想を促し、新しい発見に到達する可能性を高める質問法である。回答しにくいと感じるクライエントもいるが、「どうしてですか?」「例えば、どんなことがあげられますか?」というような質問により、発想や発見を促すことができる。クライエントを追い込むような調子での質問態度にならないこと、誘導されていると感じさせないことなどの注意が必要であり、クライエントと治療者の間に好ましい関係を形成することやクライエントの抱えている問題への理解を表現することことなどが重要である。
明確化
前提を見直す
理由や根拠を見直す
別の見方や観点を質問する
影響や結果を分析する
質問への質問
1.明確化
患者は出来事についての自動思考を唯一の選択肢と受け止めていることが多い。明確化の質問によって、患者は信念や前提をより深く検討し、思考や解釈の選択肢を増やすことができる。これらの質問はしばしばもっと教えてくれますか”カテゴリーに分類され、以下の例が典型的である
・・・と仰っていますが、それはどういう意味ですか?
このことをどう理解していますか?
なぜそのように言うのですか?
正確には、これは何を意味していますか?
このことについて、私たちはすでに何を知っていますか?
ひとつ例を教えてくれませんか?
・・・と言っているのですか?それとも・・・ですか?
それを別の言い方で言ってみてくれませんか?
2.前提を見直す
前提を問う質問では、患者が根拠としている前提条件や、疑いなく思い込んでいる信念にチャレンジする(訳注:考え直してもらう質問をする)。多くの患者は自分の信念に“なぜ”どのように”といった疑問を抱いたことがなく、一旦その考え直しを始めると、自分の信念が脆い土台に基づいていたことに患者は気づけるようになる。
どのようにこの結論に至ったのですか?
それ以外に考えられることはないでしょうか?
この考えは何らかの前に立っていますか?
どうしてその前提で考えるようになったのですか?
これらの・・・という前提を、どのようにして思いついたのですか?
その前提の正しさや間違いをどうやって確かめられますか?
もし・・・なら、どうでしょう?
・・・に賛成ですか?反対ですか?
友人や兄弟に同じことが起こったら、彼らに対して同じように考えますか?
3.理由や根拠を見直す
理由や根拠を調べることは前提を調べるのと同じようなプロセスとなる。信念を支える現実的な根拠を見るように治療者が手助けすれば、患者は自分の考えを支えている根拠がかなり未熟なものだと気づくことが多い。
どうやってそれを知ったのですか?
・・・ということを実際見せて(証明して)くれませんか?
例を教えてくれますか?
何が原因だと思いますか?
説明はそれ以外にないでしょうか?
これらの理由で十分に説明しつくせるでしょうか?
法廷に出したら、どんな風に反論されそうでしょう?
有名な新聞でもこうした理由で記事にできるでしょうか?
なぜ・・・は起こりますか?
なぜ?
あなたの言っていることを支持する根拠には、何がありますか?
これまでの人生で、別の意見を言った人はいませんでしたか?
「 」は法廷での証拠として成立するでしょうか?
4.別の見方や観点を質問する
多くの患者は別の見方を一切考慮せず、もっとも簡単に安全感やコン
トロール感を得られる見方を取るようになっている。別の見方や観点について質問することで、治療者はその立ち位置に•チャレンジする。そうすることで、他にも同じように妥当な見方があり、そうした見方を取っても、安全感やコン
トロール感が損なわれないことを患者が理解する助けとなる。
別の見方は何かありませんか?
そう考え続けることは、あなたにとってどんな意味(機能)を持っていますか?
そう考えることで得をするのは誰ですか?
・・・と・・・の間の違いは何ですか?
なぜそれは・・・より良いのでしょうか?
・・・と考える長所と短所は何ですか?
・・・と・・・はどのように似ていますか?
・・・さんなら、何と言うでしょうか?
・・・と・・・・を比べてみると、どうでしょう?
どうしたら別の見方を取れそうですか?
5.影響や結果を分析する
多くの場合、自分の抱く信念が好ましくない影響や結果につながっていることに患者は気づいていない。起こり得る結果について考え、その結果に納得できるか、望ましいのかを判断する手助けをすることで、患者は凝り固まった信念が自分の苦痛の大部分を作りだしていることに気づけるようになるかもしれない。
そう考えるとして、そしたら何が起こりますか?
その前提に立つとして、その結果どうなるでしょう?
・・・・は・・・にどう使えるでしょうか?
・・・は、結果としてどんなをもちますか?
・・・は・・・にどう影響しているでしょうか?
・・・は、これまでのセッションで話し合ったこととどうつながりますか?
・・・は、なぜ重要なのですか?
何が起こるだろうと思われますか?
その考えを手放したとしたら、それは何を意味するでしょうか?
6.質問への質問
時に、患者が治療者に挑戦したり、トラウマティックな出来事を治療者が経験したことがあるかを直接問うことで治療者・患者の境界を揺るがすことがある。たとえば、患者は直接治療者に「戦地に行ったことがありますか?」とか「レイプされたことがありますか?」などと聞くかもしれない。こうした往々にして難しい状況では、治療者は自身の臨床判断とともに、CPT特有のスキルに基づき、患者がなぜ興味を持ったのかを尋ねることができる。どの程度まで打ち明けるかは、それぞれの治療者の裁量となる。また、打ち明けることによって患者に与える影響を考慮し、その影響を踏まえて治療者は自分の対応を変えることが重要である。
治療中のこうした場面においては、おだやかな質問への質問が最も有効かもしれない。患者自身、そして質問の意図に焦点を戻すことによって、患者は自分がこの種の質問をした理由をしっかりと検討できる。治療者が本当にわかってくれているか知りたいのかもしれないし、治療者に焦点を置くことで自分自身の体験を詳しく話し合うのを避けているのかもしれない。この種の問題が生じた場合、対処する方法がいくつかある。
ご自身の体験を私がちゃんと扱えるだろうかと思っているのですね?
なぜそのことが、あなたにとって重要なのですか?私が同じ経験をした(していない)とが、どんな意味をもつのでしょうか?
答えがどちらになるにしても、それはどんな意味を持つでしょうか?
わかってくれていないと心配されていますか?
私が見落としていることがあれば、どうか教えてください。その体験があなたにとってどのようなものだったかを理解したいと思っています。
<参考文献・引用文献>
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B9%E6%A6%82%E5%BF%B5%E5%8C%96%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B-%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E8%A1%8C%E5%8B%95%E7%99%82%E6%B3%95%E3%83%BB%E6%8A%80%E6%B3%95%E5%88%A5%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E2%80%95%E2%80%95%E5%95%8F%E9%A1%8C%E8%A7%A3%E6%B1%BA%E7%99%82%E6%B3%95%E3%81%8B%E3%82%89%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E7%99%82%E6%B3%95%E3%81%BE%E3%81%A7-%E4%B8%AD%E9%87%8E%E6%95%AC%E5%AD%90/dp/4904536002
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%9E%E3%81%B8%E3%81%AE%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E5%87%A6%E7%90%86%E7%99%82%E6%B3%95-%E6%B2%BB%E7%99%82%E8%80%85%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E5%8C%85%E6%8B%AC%E6%89%8B%E5%BC%95%E3%81%8D-%E3%83%91%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%83%BB-%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%83%E3%82%AF/dp/4422117009