世界一わかりやすい心理学

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ストレスモデル

 

 

要求度ーコントロールーサポートモデル

仕事の要求度が高く、裁量が少なく、サポートがないときに最もストレスが高くなる。

 

 

ストレス脆弱モデル

個人の持つ脆弱性と職場のストレスなどの環境由来のストレスとの関係によって、精神疾患が生じるかどうかが決まる。

 

 

NIOSH職業性ストレスモデル

職場のストレスに個人的要因、仕事以外の要因が加わり、鑑賞要因が十分でないときに、ストレス反応が増悪し、疾病が発生する。米国労働安全衛生研究所<NIOSH:National Institute of Occupational Safety and Health>が提唱する職業性ストレスモデルである。

 

努力・報酬不均衡モデル

仕事のために費やされる努力(effort)の程度に対して、その結果として得られる報酬(reward)が見合っていない場合に、大きなストレスが発生する。

感情説

 

 

 

ポイント

G.Bowerの感情ネットワークモデル

このモデルでは記憶の表象内には、感情とその感情に関する出来事が連結してネットワークを構成していると仮定する。

 

A.Isenの認知容量説

この説によると、ポジティブ気分のときには、ネガティブ気分の時よりも認知容量が減少するので、システマティックな思考方略が取りにくくなり、ヒューリスティックな思考方略が取られやすい、と考える。


N.Schwarzの感情情報機能説

ポジティブな気分のときは、状況が安心安全であるということを示すため、簡易なヒューリスティック処理が用いられ、ネガティブな気分は、状況が安全安心ではないことを示すため、分析的で精緻なシステマティック処理が行われると考える。

 

L.Martinの感情入力説

これは、感情と行動の持続に関する理論で、課題の持続時間はストップルールと課題とは無関係な気分と関連すると考える。

 

J.Forgasの感情混入モデル

このモデルでは、課題の難易度や必要とされる努力の量によって、判断に対する感情の影響の大きさは異なると考える。

 

B.L.Fredricksonの拡張ー形成理論

B.L.Fredricksonが提唱した感情理論。ポジティブ感情は注意、思考、行動のレパートリーを拡大させ、身体的、認知的、社会的資源の形成を促すと考える。

 

基本感情説

P.Ekmanは基本感情として、幸福、怒り、悲しみ、嫌悪、驚き、恐怖(3)の6種類を提唱した。

基本感情説では、感情の文化普遍性を主張する。

 

ジェームズ・ランゲ説

ジェームズ・ランゲ説とは、自律的反応を含む身体反応を知覚することによって、情動が体験されるという説である。

 

感情の次元論

J.A.Russellが提唱した円環モデルは感情の次元論の代表で、感情を快不快と生理的覚醒の二次元の組み合わせで規定すると考える。

 

感情の社会的構成主義

主観的感情は文化特異な感情概念や感情語などに規定されているという考え方は感情の社会的構成主義である。

 

情動の2要因理論

情動の2要因理論とは、情動体験には、生理的覚醒と認知的解釈の2つの要因が関係すると考える。

扁桃体(amygdala)



 

 

ポイント

扁桃体は情動の生成に関わる。扁桃体は大脳皮質に保持された過去の記憶痕跡にアクセスして、過去に経験した危険と類似した環境にいる場合、恐怖などの情動を発生させることで警告する。

 

 

確認問題

[1]

大脳辺縁系のなかでもおもに情動機能を担っているのは( 1 )である。

名古屋市立大学大学院)

 

解答

[1]

1、扁桃体

信念―欲求心理学 / Wellman,H.M(ウェルマン)

 

ポイント

ウェルマンの「信念―欲求心理学」

ある行為を意図的にするということは、「欲求を持ち、かつ、その欲求を満たすのに役立つと信じる行為を行うこと」だと考える。人の意図的な行為(行動)を素朴理論(経験的なある思い込みや考え方)で説明するものです。ここでいう信念とは、「行為者の知識、確信、考え、意見の総称」で、知覚より作られる。欲求とは、欲望から目標までを含む広い意味を持ち、基本感情により作られる。

 

「信念-欲求心理学」は素朴理論の一つで、ある行為を意図的にするということは「欲求を持ち、かつ、その欲求を満たすのに役立つと信じる行為を行うこと」と考える。つまり、「信念-欲求心理学」は意図的な行為を素朴理論で説明するもの。

 

Wellmanは「心の理論」の代表的な研究者の一人。

 

「心の理論」も素朴理論の一つで、いろいろな心的状態を区別したり、心の働きや性質を理解する知識や認知的枠組みのことを指す。

 

以上のように、「心の理論」を「信念-欲求心理学」の枠組みで捉えたとき、ある人の行動を説明あるいは予想するのに3歳頃から「信念-欲求」推論シェマを用いると示される。

 

問題

[1]「心の理論」について、不適切なものを1つ選べ。

① 自他の心の在りようを理解し把握する能力である。

② 標準誤信念課題によって獲得を確認することができる。

③ D. Premackがヒトの幼児の発達研究を通して初めて提案した。

④ 「信念-欲求心理学」の枠組みに基づき、人々の行動を予測すると考えられている。

公認心理師試験 第3回 問48)

 

解答

[1]

グラウンデッド・セオリー・アプローチ / コーディング



ポイント

グラウンデッド・セオリー・アプローチ

グラウンデッド・セオリー・アプローチとは、データに密着した分析を行ないその結果を理論として提示することが可能となる研究の方法と言える。グラウンデッド・セオリー・アプローチが考案された背景として、理論の検証に偏った当時の社会学的研究における理論とデータのギャップという問題があったと指摘されている。

 

コーディング

グラウンデッド・セオリー・アプローチでは、コーディングという作業をデータ分
析の中心に位置づけている。コーディングというのはデータから概念を抽出すること
である。ここでは、その手続きについて、ストラウスとコービンは、①オープン・コーディング、②軸足コーディング、選択コーディングの3つに分けた。

 

確認問題

[1]

質的研究における分析結果の解釈の妥当性を高める方法として、最も適切なものを1つ選べ。

①インタビュー ②コーディング ③メンバーチェック 

④アクション・リサーチ ⑤グラウンデッド・セオリー・アプローチ

 

解説

[2]

①インタビューや④アクション・リサーチ⑤のグラウンデッド・セオリー・アプローチは研究に用いられる技法そのものの名称であり、妥当性を高めるための工夫ではない。②コーディングはデータを数量化したりする際に用いる符号化のことで、符号化しただけでは妥当性を高めたことにはならない。妥当性を高めるための工夫といいうるのは③メンバー・チェックである。この方法は、研究者の主観と、メンバー(研究の受け取り側のことで、研究対象者や関係者、同一領域の他の研究者、研究の評価者など)の主観の間で形成される“合意”を妥当性の指標の1つとするための技法である。つまり、研究者の解釈をメンバーに示し、その解釈に合意できるかどうか、チェックを依頼する。多くのメンバーの合意が得られるならば、解釈の妥当性が認められたと判断する。

 

 

 

社会的交換理論 / 社会的浸透理論 / 社会的インパクト理論 / 衡平理論(公平理論)

ポイント

社会的交換理論

 

ティボー(J.H. Thibaut)とケリー(H. H. Kelly)の相互依存性理論では、社会的交換は相互依存に基づいていると考える。つまり、社会的交換は互いに何かを提供しあうこと(すなわち相互依存)によって成立する。

 

社会的浸透理論

 

アルトマンとテーラー(Altman, I. & Taylor, D. A.)が対人関係の発展と衰退の過程に関して提唱した理論。彼らによると,個人のパーソナリティは,欲求や感情などの中心の層から,言語的行動などの周辺の層にわたり同心円的に構成されているという。二者が関係を進展させることを,両者の相互作用がパーソナリティの周辺の層から中心の層へと浸み込んでいくこと,つまり相互に相手の中心に向かって浸透していく過程として捉えている。二者の関係の進展は,相互作用過程で生じた報酬とコストとによって影響される。コストに対する報酬の比率が大きい時に,関係は満足するものとなり,この比率が高いと予測される時には関係が発展する。逆にこの比率が小さかったり,小さくなると予測されると関係は衰退していく。関係の進展は自己開示を通してなされていく。この理論は理論的な厳密さは必ずしも十分とはいえないが,実証研究からの知見とはよく整合していると評価されている。

 

社会的インパクト理論

「社会的インパクト理論」は、他者の存在が、個人の遂行行動に与える影響を定式化した理論です。 B. Latane(ラタネ)が提唱し、社会的手抜きや傍観者効果の説明を定式によって試みたものです。 他者の存在の影響度は、「他者の地位(強度)」と「他者との距離(直接性)」と「他者の人数」によって定められると考えます。

 

 

衡平理論(公平理論)

「衡平理論(公平理論)」とは、Adams、J.S.(アダムス)によって提唱されたモチベーションの理論です。職場において、自分と他者の「仕事量に対する対価(報酬)」を比較し、不公平さを感じる場合、それを解消し公平となるように動機づけられるという理論です。

 

 

問題

[1]

コストに対する報酬の比が個人の期待である比較水準を上回る場合に当事者はその関係に満足し、一方、別の他者との関係におけるコストと報酬の比である選択比較水準が比較水準を上回る場合には、その関係に移行すると考える理論に該当するものを1つ選べ。

①バランス理論  ②社会的浸透理論 ③社会的比較理論 ④相互依存性理論 ⑤認知的不協和理論

公認心理師試験 第5回 問13)

 

解答

[1]

ティボー(J.H. Thibaut)とケリー(H. H. Kelly)の相互依存性理論では、社会的交換は相互依存に基づいていると考える。つまり、社会的交換は互いに何かを提供しあうこと(すなわち相互依存)によって成立する。

SOAP方式における医療と心理の記載の違い



医療カルテ記載におけるSOAP方式

S(Subject):主訴・主観的情報

O(Object):所見・客観的情報・そのときの状態や様子

A(Assessment):診断・評価

P(Plan):治療方針・計画

 

心理職の現場などで取るSOAP形式

S(Subjective):クライエントの発言などの主観的な情報

O(Objective):クライエントの行動などの客観的な情報

A(Assessment):心理職としての見立て

P(Plan):今後の支援のプラン

 

「どんな状況が起きている?」「クライエントはどんな人?」「クライエントは何に困っている?」「困っているクライエントをどう支援していけばいい?」というポイントで読み解いていく。

 

①S(Subjective):クライエントの発言などの主観的な情報→クライエントはどんな人か?の手がかりとなる

(例:「私のせいでみんなに迷惑をかけてしまっていて申し訳なくて…」という発言がある)

②O(Objective):クライエントの行動などの客観的な情報→客観的状況を把握

(例:食事量が減り体重が5キロ減少した)

③A(Assessment):心理職の見立て→①②を踏まえて、「クライエントはこんな人でこんなことに困っている」と考える

(例:もともと自責的かつ完璧主義な性格もあり、今の仕事の環境に適応できず鬱状態にある)

④P(Plan):今後の支援のプラン→クライエントをどう支援していけばいいか?を考える

(例:医療につなぐ、定期的な心理面接を行う)