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心理職における専門職種との連携と協働 h28 h29 h23

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ポイント

他職種による連携と協働

他職種とは

精神科であれば,医師,看護師,作業療法士精神保健福祉士臨床心理士公認心理師)など

がん医療であれば,医師,看護師,薬剤師,理学療法士,管理栄養士,臨床心理士公認心理師)など

 

連携と協働

多職種でチームを構成し,チームとして共通の目標に向かって,各職種がそれぞれの専門性をもって,お互いに連携をとりながら,患者(クライエント)を治療・援助することを指す。

 

チームが機能するためには・連携や協働をする為に重要なこと

各職種の役割が明確なことや,責任が分担されていること,専門職種として互いに尊重しあう態度があること,職種ごとのコミュニケーションがとれていることが最低限必要とされている。

 

心理職のアイデンティティ

アイデンティティ

アイデンティティとは、自分が自分であること、さらにはそうした自分が、他者や社会から認められているという感覚。

アイデンティティとは、広く知られているように、自己の斉一性と連続性、そしてそれらが他者からも同様に承認されていることである。

職業におけるアイデンティティ

この考えに則ると、職業におけるアイデンティティは、職業観や価値観に象徴され、職業人としての自己の位置づけ、目標、そしてさらには能力に関する自己理解の程度として捉えられる。個人が専門職としてのアイデンティティを確立するためには、社会や他者との関わりを通じて職業や組織に見合った役割や価値観を獲得し、それまでの「外部者(outsider) 」から「内部者(insider)」へと移行することが必要である(Wanous、1976)生涯にわたり、自分にとってその職業がどのような意味を持つのかを問い続けることが、職業人としてのアイデンティティ確立の過程であり、その過程においては、それまでの一個人としての役割や価値観に修正を加え、さらに組織や社会から期待される役割や価値観に適応していかなければならない。特に就業初期には、職業に対する期待と実際との違いに戸惑い、職業や組織への適応が困難となる「リアリティ・ショック」という現象も起こりやすい。

心理職のアイデンティティ

心理職が心理職として存在するために必要なこと。

臨床心理士の専門職アイデンティティ尺度

この尺度は、「適性と能力(7項目)」「社会貢献(5項目)」「やりがいと充実感(4項目)」の3つの下位尺度(合計16項目)からなる心理尺度。

 

心理職のアイデンティティ・専門性と独自性・心理職の基本的姿勢

 

治療的人格変化のための必要十分条件

 ロジャーズは、カウンセリングにおいて、クライィエントのパーソナリティの変容を可能にする条件として下記の6条件を示したこの6条件のうち3、4、5はカウンセラーの条件である。

 

1. 2人の人間が心理的接触を持っている

2. クライエントは傷つきやすい不一致の状態にある。

3. カウンセラーは関係の中で一致し、統合されている(自己一致)。

4. カウンセラーはクライエントに対して、無条件の肯定的配慮を経験している。

5. カウンセラーはクライエントの内的照合枠を共感的に理解し、そのことをクライエントに伝達するように努めている。

6. カウンセラーの共感的理解と無条件の肯定的配慮がクライエントに必要最小限伝わっている。

 

カウンセラーの条件・セラピストが守るべき態度

 

上記「治療的人格変化のための必要十分条件」の中の3、4、5がカウンセラーの条件にあたる。

 

自己一致(congruence) /   純粋性(genuineness)

面接中に、セラピストが抱く自分自身のさまざま感情に気づいており、自らそれを十分に受け止め、必要ならば表現できるような状態にあること。自己概念と自己経験が一致している状態。(自分自身のありのままの感情を体験し、受容している状態)

これらの3つの態度条件を揃えカウンセラーとの関係を通じて、クライエントはあるがままの自分とその間気づき(自己洞察)、あるがままの自分とその間題を受け入れ(自己受容)、より自己一致した状態に近づいていくこと(自己実現)が可能となる。ロジャーズは、来談者中心療法の最終的な目標を、自己実現したクライエントが自分自身で問題を解決していける「十分に機能する人間」になることである、とした。

 

無条件の肯定的配慮

クライエントを、ありのままで受けとめること。クライエントが矛盾した態度をとったり、負の感情を表現したり、セラピストの価値観に反した態度をとったりしたときでも、クライエントを一人の人間として尊重することが重要である。

 

共感的理解

クライエントの私的な世界をあたかも自分自身のものであるかのように感じ取ること。クライエントのものの見方や考え方の基準を意味する内的参照枠(internal frame of reference)に即して、その人の経験や感情を認識し理解していくこと。

 

心理職は実際に何をするか

4つの専門業務

臨床心理士は,4つの専門業務(①臨床心理査定,②臨床心理面接,③臨床心理的
地域援助,④これらに関する研究)が資格取得の段階で定められている。

 

臨床心理査定(心理アセスメント)

心理面接,行動観察,心理検査などの方法を通して,援助介入を効果的にするために系統的に情報収集を行っていく「心理アセスメント」業務である。

心理アセスメントは,治療の開始前のみならず,治療の経過中,治療終了後にも心理アセスメントは行われ,介入の適否や効果についてのモニタリングにも役に立つ。

 

臨床心理面接(心理カウンセリング)

現存する症状の軽減や問題となっている行動や思考パターンの修正,人格的成長の促進などを目指して実施される「心理療法・心理カウンセリング」業務である。

この業務は, 個人療法とグループアプローチに分かれている。

医療における心理療法では「さまざまな疾患や困難をもつ患者を対象とするため,危機的な状況を早期に解決するために導入されるケースから,長期にわたるケースまで多岐にわたっている。

とくに,医療現場では薬物療法を受けている患者が前提であり,治療全体の流れの中 で,心理療法がどのような位置づけか、その目標や経過について主治医をはじめとする医療スタッフと情報を共有してゆくことが重要」と述べている。

また,グループアプローチにおける目的は,同じ問題や困難を抱えた者同士が互いに協力し,語り合う過程を通して同じ悩みを 共有して自信や意欲を回復させ,コミュニケー ション能力の向上,人間関係の改善,解決方法の習得などを目指す。

 

地域援助活動

 第三の業務として,「地域援助活動」がある。 「特定の個人だけでなく,地域住民や学校,職 場に所属する人々(コミュニティ)まで拡がり, 臨床心理士に対する社会的ニーズは高まってき ている。「地域援助」の現場では,多様複雑化 する社会的背景や人間関係に関わる上で必然的 に特定の理論や技法に限定されない統合的・包 括的アプローチが求められている」と述べてお り,社会的要請に答えることが必要である。ま た具体的なアプローチの方法として,「予防教 育・心理教育,援助の動機付けを行うなどのア ウトリーチ,ニーズを把握し調整するなどのケ アマネジメント,対象者の権利を代弁する活動 であるアドボカシー,連携する他職種との間で 行われるコンサルテーション,臨床心理士と他 機関や他職種とのコラボレーション,様々な援 助支援につなげるためのコラボレーションと ネットワーキング,政策・事業の企画立案のた めの調査や研究など政策決定に影響を与える活 動」が挙げられる。

 

研究活動

 第四に,心理臨床の経験を体系化し,そのな かから新たな知見と理論を生成することを目的とした「研究活動」がある。「実証的な知見と 有効性を社会に還元することは,臨床心理士の 社会貢献の重要な役割であり,若手臨床家へ伝 えるという教育の目的も兼ね備えている」と述 べている。

 

 

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<引用文献>

医療現場における臨床心理士の役割―チーム医療での連携や協働に焦点をあてて―

https://www.tiu.ac.jp/about/research_promotion/kiyou/pdf/14_clinicalpsychology_5.pdf

臨床心理士の専門職アイデンティティとその関連要因

https://digital-archives.sophia.ac.jp/view/repository/20170110008