ポイント
- ポイント
- ロールシャッハテスト
- 解釈(片口法)
- R <反応数(20〜45個)>
- W:D <全体反応対部分反応の割合>(=把握型、1:2)
- W:M <全体反応対人間運動反応の割合>(3:1)
- Dd% <特殊部分反応の割合>(10%前後)
- F% <純粋形態反応の割合>(25〜55%)
- F +%、ΣF+% <純粋良形態反応の割合>(どちらも60〜85%)
- M <人間運動反応>(2〜5個)
- FM <動物運動反応>
- m <非生物運動反応>(m≧2で緊張が強い)
- FC:CF + C <色彩因子の比率>
- C' <無彩色反応> [2(FC + CF + C)< Fc + c + C ' 抑うつ状態]
- c <材質反応>
- A% <動物反応の割合>(25〜60%)
- M:ΣC(= FC + 2CF + 3C / 2)<(顕在的な、意識化された)体験型>
- FM + m :Fc + c + C'(潜在的な、本人には認知されていない)体験型
- H% <人間反応の割合>
- CR(content Range):内容カテゴリーの種類数、副分類は除く
- NewF+%
- 質問紙法とロールシャッハテスト
- TATとロールシャッハテスト
- 確認問題
- 解答
ロールシャッハテスト
ロールシャッハテストは、被験者に左右対象のインクの染みを見せ、何に見えるかを答えてもらい、被検者の視知覚体験を視野、刺激特性、そして内容の3つの次元に分けて見ていくものであり、あわせて体験の評価を行うものです。すなわちロールシャッハテストでは、視野を領域(location)、刺激特性を決定因(determinant)、そして内容を反応内容(content) と呼び、評価は反応の形態質の評価(形態水準)と反応の出現頻度(平凡反応)という2側面から行われます。そして、1つの反応は反応領域、決定因、反応内容という3つの次元について記号化します。つまり、知覚の形式を記号に置き換えて定量的に分析するのです。
小川・田辺・伊藤(1997)による日本心理臨床学会会員を対象にした調査によれば、臨床の場で用いられている心理テストの中で、頻度では第2位にロールシャッハテストがあげられています。
統計学的には信頼性や妥当性に問題ありとの批判もなくはないテストでありますが、臨床の現場にあっては、有用でないものは自然淘汰されていくのが当たり前である中、このテストは臨床家の心を引きつけています。
解釈(片口法)
R <反応数(20〜45個)>
多いと野心的・緊張過度・協力的傾向を表す。少ないと非生産的、非協力的、抑うつ的傾向を示す。
W:D <全体反応対部分反応の割合>(=把握型、1:2)
Wは全体反応で、総合的・抽象的なものの見方を表す。多いと野心的で要求水準(現実的な目標)が高い。Dは部分反応で、常識的な把握を示す。
W:M <全体反応対人間運動反応の割合>(3:1)
Mは人間運動反応を示す。W>2Mの場合、要求水準が高く、野心的である。W<Mの場合、非現実的、観念的過ぎる。
Dd% <特殊部分反応の割合>(10%前後)
形態水準が高いと知的だが、不安、強迫的な傾向も表す
F% <純粋形態反応の割合>(25〜55%)
高いと感情抑制的・客観的な傾向がある。
F +%、ΣF+% <純粋良形態反応の割合>(どちらも60〜85%)
F +%は限定的な自己統制や現実吟味の程度を示し、F +%はより開かれた変化に富んだ状況における、自己統制や現実吟味の程度を示す。
M <人間運動反応>(2〜5個)
知性や想像力、内的安定性、共感性を表す。
FM <動物運動反応>
本能的、原始的な衝動性や生命力を表す。
m <非生物運動反応>(m≧2で緊張が強い)
内的緊張や葛藤を表す。
FC:CF + C <色彩因子の比率>
環境からの情緒刺激の統制の程度を示す。FC <CF + Cで情緒刺激の統制が弱い。
C' <無彩色反応> [2(FC + CF + C)< Fc + c + C ' 抑うつ状態]
抑うつ的な気分を示すが、内容も加味しなければならない。
c <材質反応>
(肌触り・感触より)愛情欲求を示す。
A% <動物反応の割合>(25〜60%)
紋切り型の指標、知的機能を表す。不安や抑うつ気分によって観念内容が貧困になると増大し、精神活動の豊かな爽快な気分においては減少する。
M:ΣC(= FC + 2CF + 3C / 2)<(顕在的な、意識化された)体験型>
M >ΣC・・・内向型(エネルギーを内に向ける人)
M <ΣC・・・外拡型(エネルギーを外に向ける人)
M ≒ΣC・・・両向型(MとCがともに多い)または両貧型(MとCがともに少ない)
FM + m :Fc + c + C'(潜在的な、本人には認知されていない)体験型
FM + m > Fc + c + C'(潜在的な)内向型
FM + m < Fc + c + C'(潜在的な)外向型
H% <人間反応の割合>
25%以上:高い
10-25%:備わっている
10%以下:低い
CR(content Range):内容カテゴリーの種類数、副分類は除く
5才及び認知症群でCR=3.8程度。年齢を重ねると増加していく。
<参考文献>
https://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/contents/osakacu/kiyo/DB00010382.pdf
NewF+%
NewF+%=〇%で<①あり、現実検討力は保たれている(≧70-80%)/②あるが、負荷のかかる場面では現実検討力は低下する/③あり、現実検討力は低い(≦70)
質問紙法とロールシャッハテスト
ロールシャッハテストを含む投影法は心理検査において、質問紙法と対に述べられることが多いです。質問紙法は厳密な統計的操作によって選択された、いくつかの質問項目からなっており、被験者はそれに多くの場合、“はい”“いいえ “わかりません” (あるいは、どちらでもない)と答えればよいです。答える際に被験者は、その質問の内容が自分のことにあてはまるか否かを内省します。そして検者は、一定の方式に従ってその答えを量的に採点し、所定の標準資料と比較して判定をおこないます。質問紙法においては、用意される質問も採点の方式も一定なので、検者が誰であろうとも、一定の結論に達しうるという意味で客観的です。
これに対して投影法は、刺激は一定のものを与えますが、これに対する被験者の反応は、きわめて多様であり、これらの反応を整理する方式も一定しているわけではありません。しかも、その解釈に際しては、すべての因子について標準化できるわけではないので、常に経験的・主観的な要素が介入する可能性が大きいです。にもかかわらず、臨床心理学の分野においては、むしろ投影法が多く用いられる傾向があります。
TATとロールシャッハテスト
他の投影法としてTATがありますが、Murstein(1963)が指摘するようにTATの分析法は解釈者の数だけあるといえ、とても分析や解釈の仕方が確立されているとはいえません。従って、ロールシャッハテストのようには確立された体系がなされていないとされます。その理由としては、反応の記号化や数量化が困難であることがあげられます。この理由は少なからずSCTにも当てはまります。ラパポート(1968)もロールシャッハテストや言語連想検査に比べれば、TATは、その用い方によっては非常に有用なものであるにもかかわらす「テスト」としての理想型からはほど遠いものであると述べています。
確認問題
[1]
次の文章はロールシャッハテストに関する説明である。空欄に適切なことばを入れなさい。
ロールシャッハテストはスイスの精神科医ヘルマン・ロールシャッハによって創始された(1)検査の一種である。検査に使用される図版は10枚である。図版はインクのしみでできた左右対称のインクプロットで、(2)色のみの図版やオレンジやブルーなどが混在した(3)色の図版がある。ロールシャッハテストはロールシャッハが著書に「精神診断学一知覚診断的実験による方法と結果」とタイトルをつけたように、(4)検査の一種である。暖味な偶然にできあがった図形を見る場合、人は個人によって少しずつ違う知覚の構えを用いて判断するので、その知覚の構えを分析することで、個人の心理構造を明らかにしようとする。ロールシャッハテストでは図版を一枚ずつ順に被検者に提示し、何が見えるかを反応してもらい。まず(5)的な分析を行う。すなわち、反応数や反応時間はどれくらいか、反応は図版のどの(6)から得られたか、運動や(7)など反応を決定つづけた要因は何か、どのような反応(8)かを記号に置き換えて分析する。
(神戸親和女子大学院 文学研究科 心理臨床学専攻)
[2]
投影法パーソナリティ検査の特徴(長所、短所を挙げて)について説明しなさい。
(桜美林大学大学院 心理学研究科 臨床心理学専攻)
[3]
性格検査の投映法について、長所、短所を述べなさい。
(静岡大学大学院 人文社会科学研究科 臨床人間科学専攻)
解答
[1]
1、投影法 2、黒
3、彩 4、知覚
5、継起 6、領域
7、形 8、内容
[2]
投影法パーソナリティ検査とは、あいまいな刺激を被験者に提示し、それに対するクライエントの回答内容から、性格を理解しようとするものである。ロールシャッハ・テストやTATなどが投影法パーソナリティテストの代表である。投影法パーソナリティ検査の長所としては、刺激があいまいで検査の意図が分かりづらいため、虚偽の回答をしにくいこと、また、クライエント本人も自覚していない無意識的なパーソナリティを理解することが可能である点が挙げられる。その一方で短所としては、テストの解釈に習熟を要することや、解釈方法に客観性が十分に保証されていない点などが挙げられる。また、ロールシャッハ・テストなど1対1で長時間にわたる検査の場合、実施に時間がかかるためクライエントの負担になりやすい点も短所と言える。
[3]
投映法の長所は、曖昧な刺激のため検査の意図がわかりづらく、虚偽の回答がしにくいことやクライエント本人も自覚していない無意識的なパーソナリティを理解することが可能である点がある。一方で、短所は、テストの解釈に習熟を要することや、解釈方法に客観性が十分に保証されていない点などが挙げられる。また、ロールシャッハ・テストなど1対1で長時間にわたる検査の場合、実施に時間がかかるためクライエントの負担になりやすい点も短所と言える。
まとめ
臨床心理学の分野においては、
ロールシャッハテストが多く用いられる傾向があるのは、
投影法としての良さ、反応の仕方が多かれ少なかれ自由であり、
解釈が検者の主観に左右されるという点が、
他の投影法よりも解消されているからではないでしょうか。
<画像>
<参考文献>