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エミール・クレペリン(Emil Kraepelin)の病因論

 

ポイント

 

クレペリンは19世紀末に精神疾患を分類しようと試みた。精神疾患の原因によって内因性精神病・心因性精神病・外因性精神病の3つに分類する。しかし、医学の進歩とともに、この分類法の有用性は薄れてきており、次に述べる操作的診断が主流なる。

 

 

内因性精神病

精神疾患の発症が、主に遺伝や生まれ持った体質(器質)、素質による脳の機能障害に起因していること。

ex.双極性障害統合失調症

 

外因性精神病

外部から加えられた原因として、身体的な疾患や負傷、障害、外的刺激などが、精神疾患の主な発症要因となっていること。

ex.脳の損傷、パーキンソン病、脳血管障害、脳の萎縮、薬物アルコール・タバコへの依存などによる精神障害認知症など。

 

心因性精神病

過度のストレスやトラウマ、ある種の性格傾向など心理的な問題が疾患の主な原因となっていること。

ex.心身症神経症適応障害パニック障害摂食障害睡眠障害、ストレス関連障害、うつ病など。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大脳半球優位性

 

 

ポイント

 

大脳半球優位性

左右二つの大脳半球の間に機能の分化があり、特定の機能に関して一方の半球が他方より強く関与していること。一般的に言語機能は左半球優位で、視空間の認知機能は右半球優位と言われている。大脳半球優位性の研究は分離脳研究によって大きく進歩した

脳波(EEG:Electroencephalogram)

 

 

ポイント

 

δ波(デルタ波)

0.5〜4Hz未満の律動であり、ぐっすり寝ている時に現れる。

 

θ波(シータ波)

4〜8Hz未満の律動であり、うとうとと眠くなって来た時に現れる。また、θ波の増加は、海馬の萎縮と関係があるとされており、老化によって増え、認知症では顕著に増加が現れる。

 

α波(アルファ波)

覚醒時出現する8Hz 13H2の律動であり、精神的に比較的活動していないときに出現する。

 

β波(ベータ波)

13〜40Hz未満の律動であり、精神活動をしている部位に現れる。

 

 

 

確認問題

[1]

成人の脳波について、正しいものを1つ選べ。

① α波は閉眼で抑制される。

② α波は前頭部に優位である。

③ β波はレム睡眠で抑制される。 

④ δ波は覚醒時に増加する。

⑤ θ波認知症で増加する。

公認心理師試験 第1回 問10)

 

 

解答

 

[1]

5

 

① ×抑制→優勢 また、α波は後頭部に優位である。

② 後頭部から頭頂部によく現れる。(優位である。)

③ 睡眠中にβ波はほとんど出ておらず、抑制されるわけではない。

④ δ波はぐっすり寝ている時に現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

自尊感情(self-esteem)

 

自尊感情(self-esteem)

自己に対する価値的感情や態度のこと。自尊感情は、その人自身に常に意識されているわけではないが、その人の言動や意識態度を基本的に方向付ける。その意味で精神的健康や適応の基盤をなす。

 

 

cf.

セルフ・ハンディキャッピング

なんらかの課題遂行をする際、自尊心を維持するために、事前に自分にとって不利な情報を他者に主張すること。ジョーンズ)(Jones、E. E.)らによって提唱された。

自己概念(self-concept)

 

自己概念(self-concept)

 

自らが自己を対象(客体)として把握した概念。自分の性格や能力、身体的特徴などに関する比較的永続した自分の考え、あるいは、外界との相互作用の中で収集・蓄積された自分自身に関する知識、と説明する場合もある。「自己像」、「自己イメージ」という語が同義に扱われることもある

自己開示(self-disclosure)

 

ポイント

 

自己開示(self-disclosure)

 

自分の主観的世界や自分に関する情報について、他者に言語を介して伝える行為を言う。厳密に言えば、何の意図も無しに背定的な面も否定的な面も含めて、ありのままの自分の姿を伝達すること相手との親密性を高めたり、コミュニケーションを活性化したりするために必要なものと考えられる。

対人不安や対人ストレスの高い人、コミュニケーションの問題を抱える人などに対し、SSTソーシャルスキルレーニング)が用いられることがあるが、その中で、自己開示の方法を訓練していくという手法が用いられることも多い。

 

 

自己開示の機能

・個人的機能

 

・感情表出機能

開示することで感情が浄化される。自己開示をするほど精神的健康は高い。

 

・自己明確化機能

自己開示によって自己を客体視し、自己概念が明確になる。

 

 

・対人的機能

 

・社会的妥当性機能

自己開示の受け手の反応によって、自分の意見や態度の社会的妥当性を判断することができる。社会的コントロール機能自己開示を意図的にコントロールすることで、自分の印象をコントロールできる(自己呈示と同じ)。

 

・二者関係の発展機能

返報性のルールに従って、自己開示をされると、同程度の量と質自己開示を相手に行う。自己開示の繰り返しによる二者関係が進展する。

 

 

自己開示の返報性(reciprocity)

「返報性」とは他者から受けた利益や行為に対して、それと同種、同程度のものを他者に返すことをいう。例えば、こちらが趣味の話をしたら相手も趣味の話、より個人的な家庭の話をしたら相手も家庭の話をするといった具合で、同程度の深い話をするようになる。

 

 

確認問題

 

[1]

ひとたび自分が他者に自己開示を行うと、相手からも同程度の自己開示を受けることが期待されるが、このような性質を自己開示の(1)という。

名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 人間文化専攻)

 

[2] 

アルトマン(Altman, I.)とテーラー(Taylor, D.A.)の社会的浸透理論では、自己開示の(1)によって、対人関係は親密化していくと考えられている。

名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 人間文化専攻)

 

解答

[1]

1、返報性

 

[2] 

1、返報性

自己呈示(self-presentation)

 

 

 

ポイント 

 

自己呈示(self-presentation)

自分に対する望ましい印象を他者に与えるため、意図的、作為的に行動することをいう。印象管理とも言う。自己開示は言語的伝達のみを対象とし意図的/非意図的を問わないが、自己呈示は非言語的伝達も含み意図的であることが多い点で異なる。

 

 

取り入り

自分の好ましい特性をアピールすることで、他者を納得させる。

 

威嚇

自分が相手に害を及ぼすような危険な性質を持っているという恐怖を、他者に植え付けることによって他者を納得させる。

 

自己宣伝

他者が自分を尊敬させるために、自分の能力を示す。

 

示範

自分が賞賛に値する道徳的美徳を持っている良い人間なのだと、他者を納得させる。

 

哀願

他者からの助けや利益を得るために自分が貧しくて、援助に値するものだと他者を納得させる

 

cf.

ハロー効果(halo effect)

ある対象を評価する時に顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象。

 

 

 

確認問題

 

[1]

括弧にあてはまる適切な専門用語を答えなさい。

他者がある側面で望ましい(望ましくない)特徴をもっていると、その評価を該当人物に対する全体的評価にまで広げてしまう傾向を(1)という。

東京成徳大学大学院 心理学研究科 臨床心理学専攻)

 

問題

[1]

ハロー効果(光背効果)