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公認心理師法と倫理・公認心理師の役割

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公認心理師法:目的

公認心理師の業務は国民の心の健康の保持促進に寄与することである。

 

公認心理師法:定義

公認心理師法第2条に示されている公認心理師の定義には、「公認心理師」の名称を用いて要心理支援者および要支援者の関係者に対して行うべき業務が示されている。ここで、今までの心理職と異なる点としては教育及び情報の提供が初めて業務として位置づけられている点である。

 

公認心理師法:法的義務

法第40条では信用失墜行為の禁止、法第41条では秘密保持義務があり、これに違反した場合は罰則規定がある。

 

その担当者する者に対して、保険医療・福祉・教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるようにする。

 

当該支援に係る主治の医師があるときは、その支持を受けなければならない

 

法第2条の補足

支援に取り組む際、また支援中であっても心理アセスメントを行いあるいは修正し、支援が適切・効果的であるかを生物心理社会モデルの視点から検討し続けることが大切である。

 

要心理支援者が自己理解を深め自己決定を促進できるように、個人をエンパワーメントする。

 

法第40条 信用失墜行為の禁止

違法行為法的違反行為だけでなく、社会的な信用を失う行為もしてはならないとされている。公認心理士は、法で規定された業務と役割は、国民からの負託として受け止めなければならない。

 

法第41条 秘密保持義務

公認心理師は、正当な理由が無く、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはいけない。正当な理由とは、裁判司法手続のほか、それらに関連する理由が想定されるが、人命にかかわる非常事態なども考えられる。

 

公認心理師はクライエントから伝えられた事柄を外に漏らさないことが原則であるが、いくつかの例外状況はある。たとえば、明確で差し迫った生命の危機があり、攻撃される相手が特定されている場合、自殺等、自分自身に対して深刻な危害を加えるおそれのある緊急事態、虐待が疑われる場合、相談室内のケースカンファレンス等、による定めがある場合、医療保険による支払いが行われる場合、クライエントが、目分自身の精神状態や心理的な問題に関連する訴えを裁判等によって提起した場合、クライエントによる明示的な意思表示がある場合、である。

法第43条 資質向上の責務

公認心理士には、資質向上の責務が求められる。そのために、生涯学習自己研鑽相互研鑚は重要である。

 

法と倫理の違い

法と職業倫理の違いは、法は国家権力を背景に持ち、強制力がある。最低限の基準という法的な考えと異なり、職業倫理は行動規範であり現実の問題解決の指針となる。

 

命令倫理と理想追求倫理

「しなければならないこと」「してはならないこと」という命令倫理と専門家として目指す最高の行動基準を目指す理想追求倫理などのレベルがある。

 

注意の標準

専門的能力に関する判断の一つとして、特定の情況のもとで過失の有無を判定するための標準を注意の標準という。心理職の場合、 この判断基準とみなされるのは、国内外の学会等が作成している種々のガイドラインといえる。

 

教育・訓練・経験に基づく専門的能力

心理学の職業倫理として示される基準は、自身の教育訓練経験に基づく専門的能力である。

 

警告義務:保護義務

自身あるいは他者の生命に関する明確かつ切迫した危機が存する状況は、タラソフ判決から導き出された警告義務が適用される状況である。これ以降、犠牲者となりうる人を積極的に保護することを求めていることから保護義務と呼ばれるようになった。 この義務は、自殺についても適用される。

 

コンピテンシー

特定の専門家が、適切で効果的なやり方で業務を行う資格を持ち、その専門職の倫理観や価値観に沿ったやり方で、逃切な判断、批判的思考, そして意志決定ができる力をコンピテンシーと言い、近年、立体モデル(competency cube)で説明される。

 

反省的実践

心理職にある者は、常に自分自身の能力と技能を見定め必要に応じてその活動を修正していく反省的実践に取り組む。これを促進させるための方法としては経験豊富な心理職からのスーパービジョン精神分析で言う教育分析などがある。

 

 

確認問題

[1]

下記の用語について簡潔に説明しなさい。

・警告義務

静岡大学大学院 人文社会科学研究科 臨床人間科学専攻)

 

[2]

14歳の女子A、中学生。摂食障害があり、精神科に通院中である。最近、急激にやせが進み、中学校を休みがちになった。Aの母親と担任教師から相談を受けた公認心理師であるスクールカウンセラー が、Aの学校生活や心身の健康を支援するにあたり、指示を受けるべき者として、最も適切なものを1つ選べ。

① 栄養士
② 学校長
③ 主治医
④ 養護教諭
⑤ 教育委員会

公認心理師試験 第1回 問3)

 

 

解答

[1]

虐待が疑われる場合や、明確で差し迫った生命の危機があるときなどは、クライエントの承諾なしに情報を必要なところ(警察、保護者など)に提供することが義務付けられている。これを警告義務という。殺人事件の被害者およびその家族が、危険が及ぶことを知らされていなかった事件の判例タラソフ判例)が警告義務に影響している。

 

[2]

 

cf.

第42条2項
公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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