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トマス(Thomas, A.)とチェス(Chess, S.)の気質

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トーマスとチェスはNew York Longguitudinal Study:NYLS(=ニューヨーク縦断研究)と名付けられた研究を進め、その中で気質を定義づけ、測定可能としました(1977)。
ニューヨーク在住の中流家庭・上流家庭の子ども136名を対象にした縦断研究(それぞれの子どもの成長プロセスを追跡調査する研究)で、乳児期~青年期までの子どもの気質の類型や個人差を調べた先駆的研究として知られています。
調査対象になったのは、乳幼児期(生後5年まで)と青年期(18歳~24歳まで)の子どもや青年であり、子どもの気質の分類を調べるために観察法・心理テスト(質問紙法・知能検査)・両親との面接・教師や保育士からの聴取などを行いました。

この研究では、気質を行動のスタイルの要素として捉えています。
すなわち気質は行動を「どう進めるか」に関わるものであり、行動の「なぜそう行動するか」(動機づけ)や行動の「何ができるか」(能力)とは区別されます。
よって、この研究では子どもが行動をどのように表すのかに焦点をあてたものと言えるでしょう。

この研究では、冒頭で示した気質の定義の通り、気質には生物学的な基礎があり、乳児期には行動として現れると想定されています。
こうした調査の前提の定義を知っておくと、9つの気質を覚えていなくても解ける問題だったかしれません。
なぜなら、9個の気質をしっかりと覚えておくというのは困難だと思われるためです(ミラーの不思議な数字を超えていますよね)。

トーマスらは親へのインタビューから個人差を表す次の9つの気質の特性リストを作りました。

【1.活動水準】
「活発に動いている時間」と「不活発で動かない時間」との比率、身体の動作の激しさやその度合い、動かしている時間。

【2.生物学的機能の規則性】
睡眠・食事(摂食)・排泄などの生物学的本能に基づく行動・機能が規則正しく行われているか。

【3.新しい刺激に対する接近と尻込み】
今までに経験したり接触したりしたことがない新しい状況や物事に対する最初の反応。
新規な刺激に対して近づこうとするか、避けよう(逃げよう)とするかの違い。

【4.最初の反応に続く新しい状況への順応性】
新しい状況や環境、人間関係、物事に対して、どれくらいスムーズに適応できるかの違い。

【5.感覚的応答性の閾値:要は反応の強さ】
ある反応・行動を引き出すための刺激の閾値(反応が現れ始めるレベルの数値)がどれくらいかの違い。

【6.情動的反応の(質とは別の)強度】
外的刺激や内的刺激(内部的な身体感覚)に対する反応がどれくらい強いかの違い。

【7.気分の全般的な肯定性対否定性:要は機嫌の良さ】
快・不快の刺激をどれくらい感じやすいか、快・不快の感情をどれくらい直接的に表現するかの違い。

【8.行動の可変性:外的刺激によって行動が左右されやすい傾向】
ある行動を変化させたりやめさせたりするために、どれくらい強い刺激が必要になるかの違い。

【9.注意の幅と持続性:困難があっても粘り強く取り組むこと】
一つの事柄に注意を向けるか、複数の事柄に注意を向けるかの違い。
単一の活動の持続時間とそれが妨害された時の執着の度合い。

ニューヨーク縦断研究では、調査対象の子ども達をこれら9つの気質の基準に関して、5段階で評価しました。
そしてトーマスらは、各基準の評価の組み合わせによって子ども達を次の4つのタイプに分類しました。
扱いやすい子:
睡眠・食事・排泄が安定していて規則的であり、機嫌が良くて精神状態が安定している。新規な状況や物事に対して好奇心を持って接近し、新しい環境に対する適応が早い。すなわち、規則性が高く、順応性・接近性が高い。
扱いにくい子:
睡眠・食事・排泄が不安定でバラバラであり、機嫌が悪くて精神状態も不安定(感情的に怒りやすいなど)である。新規な状況や物事に対して不安感を感じて回避し、新しい環境に対する適応は遅い。すなわち、規則性・順応性が低く、回避傾向が高い。
順応が遅い子:
新規な状況や物事に対しては不安感を感じて回避しがちであり、新しい環境に対する適応は苦手である。しかし、睡眠・食事・排泄の生理的機能は安定していて規則的であり、普段の機嫌は良くて精神的にも安定している。すなわち、規則性は高いが、順応性が低く、回避傾向が高い。
平均的な子:
特別に優れている所も劣っている所もない子どもであり、全体的に見て「平均的な機能・適応・安定」を持っている。
ニューヨーク縦断研究では上記した4つの気質タイプの割合は、扱いやすい子:40%、扱いにくい子:10%、順応が遅い子:15%、平均的な子:35%という結果が出ています。