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自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD:Autism Spectrum Disorder)

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ポイント

 

DSM-5での神経発達症群の種類

 

 DSM-Ⅴでは、神経発達症群/神経発達障害群に知的能力障害、コミュニケーション症、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、限局性学習症、発達性協調運動症/発達性協調運動障害、チック症群/チック障害群が含まれる。

 

今までのASD

 これまで、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害は広汎性発達障害という名称が用いられてきた。広汎性発達障害DSM-5から自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害という名称に変更され、自閉症障害、アスペルガー障害という名称も自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害に一本化された。自閉性障害、アスペルガー障害、高機能自閉症など様々なカテゴリーが生み出されたが、概念の重複が見られ厳密な区分は困難であったことが一本化された理由と推測できる。

 

ASD自閉スペクトラム症)の特徴

 障害の特徴として、第1に社会的コミュニケーションや社会的関係における持続的な欠陥、第2に興味または活動の限局、常同行動の反復、第3に症状は発達初期段階から認められていること、第4に症状が社会的・職業的または他に機能している重要な領域に支障を及ぼしていること、の4つすべてを満たす場合に診断される。

 

自閉症/自閉性障害

 初めて自閉症(autism)の概念を発表したのは、カナー(Kanner,L.)である。カナーが診た子どもたちは、社会的関係の障害、コミュニケーションの障害、想像力と創造性の障害という後にウィングらに提唱される3つ組の障害を持ち、知的障害や言語の遅れが見られる。上記の3つの行動症状が明確に認められるタイプの子どもたちであった。そのため、自閉症をカナー症候群(カナータイプ)と呼ぶことがある。自閉症児の約8割は知的障害を伴う。そのため、知的障害を伴わない自閉症に対しては、高機能自閉症(high functioning pervasive developmental disorder)と呼んで区別することがある。

 

アスペルガー障害

 

 アスペルガー障害(asperger syndrome)は、アスペルガー(Asperger,H.)によって報告された。彼の診た子どもたちの症状は自閉症によく似ていたが、言語能カや知的能力が高かった。しかし、社会性、想像力に発達早期から障害をもっており、自閉症児と同じような支援が必要であると考えられ、広汎性発達障害の一つとして位置づけられていた。つまり、アスペルガータイプとは、3つ組の障害を持っているが、言語の遅れが見られないタイプの自閉症のことである。

 

DSM-5でのASDの診断基準

 

A. 社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害

B. 行動、興味または活動の限定された反復的な様式

C. 症状は発達早期から存在していなければならない

D. 機能障害

E. 除外基準

 

A. 複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥があり、現時点または病歴によって、以下のすべてにより明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)

 

(1) 相互の対人的-情緒的関係の欠落で、例えば、対人的に異常な近づき方や通常の会話のやりとりのできないことといったものから、興味、情動、または感情を共有することの少なさ、社会的相互反応を開始したり応じたりすることができないことに及ぶ。

→他者と関わり、考えや感情を共有する能力が欠如

 

(2) 対人的相互反応で非言語的コミュニケーション行動を用いることの欠陥、例えばまとまりの悪い言語的、非言語的コミュニケーションから、アイコンタクトと身振り異常、または身振りの理解やその使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ。

→非言語的コミュニケーションの発達の遅れ

 

(3) 人間関係を発展させ、維持し、それを理解することの欠陥で、例えば、様々な社会状況に合った行動に調整することの困難さから、想像上の遊びを他者と一緒にしたり友人を作ることの困難さ、または仲間に対する興味の欠如に及ぶ。

→他者への拒絶や攻撃性などとして現れる可能性

 

B. 行動、興味または活動の限定された反復的な様式で、現在または病歴によって、以下の少なくとも2つにより明らかになる(以下の例は一例)

 

(1) 常同的または反復的な身体の運動、物の使用、または会話(ex:おもちゃを一列に並べたりものを叩いたりするなどの単調な常同行動、反響言語、独特な言い回し)

→興味は極めて限定され、自発的な行動は決まりきったワンパターンに集結する

 

(2) 同一性への固執、習慣への頑ななこだわり、または言語的、非言語的な儀式的行動様式(ex:小さな変化に対する極度の苦痛、移行することの困難さ、柔軟性に欠ける思考様式、儀式のようなあいさつの習慣、毎日同じ道順をたどったり、同じ食べ物を食べたりすることへの要求)

→変化への抵抗や儀式的な行為

 

(3) 強度または対象において異常なほどきわめて限定され執着する興味(ex:一般的ではない対象への強い愛着または没頭、過度に限局したまたは固執した興味)

→極度に限定され固執した関心

 

(4) 感覚刺激に対する過敏さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味(ex:痛みや体温に無関心のように見える、特定の音または触感に逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光または動きを見ることに熱中する)

→極度に敏感または鈍感

 

C. 症状は発達早期に存在していなければならない(しかし、社会的要求が能力の限界を超えるまでは症状は明らかにならないかもしれないし、その後の生活で学んだ対応の仕方によって隠されている可能性もある)
→症状が発達早期から存在すること

 

D. その症状は、社会的、職業的または他の重要な領域における現在の機能に臨床的に意味のある障害を引き起こしている。
→機能障害の存在

 

E. これらの障害は、知的能力障害(知的発達症)または全般性発達遅延ではうまく説明されない。知的能力障害と自閉スペクトラム症はしばしば同時に起こり、自閉スペクトラム症と知的能力障害の併存の診断を下すためには、社会的コミュニケーションが全般的な発達の水準から期待されるものより下回っていなければならない。
→除外基準

 

ASDに併存する疾患および鑑別疾患

 精神病状態、気分障害統合失調症強迫性障害、社交不安症、ヒステリー症状などが併存する可能性がある。例えばロールシャッハテストを用いた場合、統合失調症との鑑別においては、ASDは認知の流動性が少ないこと、ASD固執内容は独自の興味関心に基づいていること、統合失調症では知覚が不安定で多様な刺激をまとめることが難しいことなどが鑑別のポイントとなる。

 ASD患者におけるてんかん発症率は約30%で、てんかん患者におけるASD発症率は約5%である。ASD患者におけるてんかん初発作は2〜18歳ごろにみられる。

 

ASDの治療

 ASDの基本的特徴は認知機能の偏りであるため、いわゆる治療を目標とすべきではない。認知特性に合わせた環境を設定(構造化)することによって、本来持っている機能を十分に発揮し、QOLを高めることが重要である。視覚認知の強さを考慮し視覚支援を活用するなどがあり、TEACCH Autism Program が参考になる。その他、SSTや応用行動分析を活用した介入をする場合もある。

治療薬と副作用

 薬物治療の余地はあまりない。易刺激性、多動、興奮に対して少量の抗精神病薬リスパダールエビリファイなど)が奏功することがある。

 

 

問題

 

[1]

自閉症スペクトラムに関する次の記述のうち適切なものを一つ選びなさい。

① 自閉症の原因は、親の養育態度によるところが大きいと考えられている。

② 自閉症アスペルガー障害には知的障害がみられ、診断上の基準になっている。

③ 2〜4歳ごろから、反応にとぼしい、目をあわさないなどの行動が見られる。

④ 身ぶりによる対人コミュニケーションは得意である。

⑤ 有病率は、男子より女子に多い。

帝京平成大学大学院 臨床心理研究科 臨床心理学専攻)

 

[2]

空欄に最も適切な語を堪えなさい。

 知的発達は保たれているが、対人関係や情緒な障害を主とする発達障害を(1)障害という。共感性が乏しく他者との情緒的交流が難しく、関心の幅は狭いが自分の関心あることには熱中する。

東京成徳大学大学院 心理学研究科 臨床心理学専攻)

 

 [3]

括弧にあてはまる適切な語を答えなさい。

(1)という用語は、自閉症を社会性、コミュニケーション、想像力の3つの共通した障害の特徴からとらえる新たな概念として、イギリスの研究者ウィングら(Wing,L. et al.)によって提唱された。

目白大学大学院 心理学研究科 臨床心理学専攻)

 

[4]

自閉スペクトラム症の症状と援助について述べなさい。

名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 人間文化専攻)

 

[5]

下記の用語について簡潔に説明しなさい。

ASD

静岡大学大学院 人文社会科学研究科 臨床人間科学専攻)

 

[6]

下記の用語について簡潔に説明しなさい。

・repetitive / restricted behavior

静岡大学大学院 人文社会科学研究科 臨床人間科学専攻)

  

解答

 

[1]

 

[2]

1、アスペルガー

 

[3]

1、三つ組 

 

[4]

自閉スペクトラム症の症状における特徴は、第1に社会的コミュニケーションや社会的関係における持続的な欠陥、第2に興味または活動の限局、常同行動の反復、第3に症状は発達初期段階から認められていること、第4に症状が社会的・職業的または他に機能している重要な領域に支障を及ぼしていることの4つすべてを満たす場合に診断される。援助には、療育やTEACCHがある。

療育は、障害児の持つ個別性に応じた心身の発達支援と医療・教育、福祉各分野の連携により行われる治療的な保育・教育及び支援のことである。TEACCHは、エリック・ショプラーにより創始された構造化を重視した、地域ぐるみの自閉症援助プログラムである。

 

[5]

自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder)、神経発達障害の一つ。障害の特徴として、第1に社会的コミュニケーションや社会的関係における持続的な欠陥、第2に興味または活動の限局、常同行動の反復、第3に症状は発達初期段階から認められていること、第4に症状が社会的・職業的または他に機能している重要な領域に支障を及ぼしていること、の4つすべてを満たす場合に診断される。

 

 [6]

常同的・限定的な行動は、自閉スペクトラム症の障害の特徴の一つ。自閉スペクトラム症は、第1に社会的コミュニケーションや社会的関係における持続的な欠陥、第2に興味または活動の限局、常同行動の反復、第3に症状は発達初期段階から認められていること、第4に症状が社会的・職業的または他に機能している重要な領域に支障を及ぼしていること、の4つすべてを満たす場合に診断される。