ポイント
扱うデータの種類によって、質的研究(qualitative study)と量的研究(quantitative study)に分けられる。
質的研究(qualitative study)
主に記述的データを用いて言語的・概念的な分析を行う研究法。数量的測定によらない研究。仮説生成型の研究である場合が多い。エスノグラフィー、事例研究などは質的研究の代表的な方法である。
(長所)
これまでの量的研究では扱うことのできなかった少数のサンプルしかない研究テーマ(研究対象)の研究が可能。数値では表しきれない多様な現象を扱うことができる。
(短所)少数のサンプルに基づいて仮説を生成するため、結果の適用範囲には限界がある。対象者のプライバシーに対して十分に配慮する必要がある。
量的研究(quantitative study)
数値で表現されたデータに基づく研究で、統計的な分析をもとに仮説の検証を行う研究法。仮説検証型の研究である場合が多い。実験法、調査法などが量的研究の代表的研究法。
(長所)数値化された変数間の関連を統計手法に則って分析するため、客観的に相関関係、因果関係を理解することができる。予測が可能になる。
(短所)数値で表すことのできない現象を捉えることが難しい。
研究目的による分類
仮説生成型研究
仮説を立ち上げることそのものを目的とする研究。研究者にとっての客観的真実を想定せず、研究対象者にとっての行為、経験、考え、意味を探求する。
仮説検証型研究
先行研究に基づいて仮説を設定し、それを検証することによって、既存の理論を精級なものへと発展させたり既存の理論への反論を提出したりする研究。
法則定立的アプローチ(nomothetic approach)
臨床心理学においては、主に量的研究法を用いて人間の普遍的なパーソナリティや心理的特性などを明らかにしようとするアプローチ法。
個性記述的アプローチ(idiographic approach)
臨床心理学においては、主に面接といった質的研究法を用いて、個人ひとりひとりのパーソナリティを詳細に記述しようとするアプローチ法。
確認問題
[1]
質的研究の具体的な研究方法を1つ挙げ、その研究方法の特徴を以下の点に触れながら簡明に論じなさい。
①質的研究とは、質的なデータの意味の読み取りを軸にして分析を進めるさまざまな方法をいう。
②また、研究対象となる“現実”をどのようなものと考えるか、研究活動をどのようなものと捉えるかにおいて、量的研究で主流な考え方とは異なる点がある。
(静岡大学大学院 人文社会科学研究科 臨床人間科学専攻)
解答
[1]
具体的な研究方法:観察法
①質的なデータの意味の読み取りを軸にして分析を進めるさまざまな方法である。質的なデータは、符号化、数値化以前の言語で記述されたデータのことであり、これらに対して言語的、概念的な分析を行う。
②量的研究で主流な考え方として、量的研究は因果関係を明らかにするための研究である。一方、質的研究は現実の時間にともなう変化などのプロセスの理解に重点を置く。