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家族療法(family therapy)

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ポイント

 

家族療法は、家族を1つのまとまりをもったシステムとみなし、その家族のシステムを治療の対象とする心理療法である。

家族療法では、問題行動や症状を呈している人物を「IP(Identified Patient)」とよび「IP」の症状は個人だけではなく家族のSOSであるとみなす。

家族療法では、個人が抱える心理的問題は、家族全体のシステムやコミュニケーション、関係性の問題の反映であると考える。

 

直線的因果律

心理的問題は個人内に何らかの原因が生じており、その結果、問題が生じているという考え方。精神分析的アプローチは直線的因果律の考え方に基づいている。

 

円環的因果律

家族は相互に影響を及ぼし合い循環・連鎖しているという考え方。そのため、個人の問題は1つの原因に帰着することはできないと考える。家族療法はこの円環的因果律の考え方に基づいている。

 

 

 

家族療法の代表的モデル
多世代家族療法

 

自己分化していない家族メンバーが家族遺産や目に見えない忠誠心に拘束され、親世代から譲り受けた問題を何度も繰り返す家族を問題のある家族として捉え、家族の自己分化を促す家族療法である。

家族の関係性は、世代から世代と伝承されていくと考え、その伝承は多世代伝達過程(multigenerational transmission process)と呼ばれる。

 

マレー・ボーエン(Bowen,M)が中心人物である。多世代家族療法は、精神分裂病の家族研究をしたボーエンが家族療法を体系化たものであり、個人や家族の問題を、何世代かにわたる家族の発展の歴史という文脈の中で理解しようとするものである。

ボーエンは個人の中で理性的機能と情緒的機能が分化しているか、個人か家族から分化しているか、といった自己分化の概念を重視し、分化の程度が低いと反動的態度に出たり、家族を巻き込むこととなると考えた。

 

構造的家族療法

 

 

世代間境界が曖昧または過度に融合しているか、もしくは過度にバラバラな家族を問題のある家族と捉え、ジョイニングなどを行い家族の再構造化を行う家族療法である。

中心人物はサルバドール・ミニューチン(Minuchin, S.)である。

 

家族の関係性をサブシステム(夫婦・きょうだいなど)に区分し境界(boundary)、連合(alignment)、権力(power)、の三つの観点から家族の構造的に理解しようとする。特にサブシステムの一つである母子共生関係の解体と両親の親連合の構築を行う。

ジョイニングの技法、家族問題となっている関係性をセラピストの前で再演するエンナクトメント(enactment)の技法、再演されたものにセラピストが異なる意味づけを行うリラベリング(re-labeling)の技法、セラピストによる模倣、再演の演出などにより新しい相互の関わりをもたらすことで構造的な変化を行う。

 

 

コミュニケーション派家族療法 / MRI(Mental Research Insititute)グループ

 問題行動自体ではなく、それを持続させている好ましくない相互作用のパターンを問題として取り上げ、アプローチする家族療法である。

代表的人物はベイトソン(Bateson, G.)である。ベイトソンのコミュニケーション理論(二重拘束理論)を元に発展した。

問題の原因を家族成員間のコミュニケーションパターンにあるとし、「いま・ここ」で起こっている家族間コミュニケーションに注目し、家族内のコミュニケーションの質的な改善を目指し介入を行う。

 

cf.

二重拘束理論(double bind theory)

一次的なメッセージ(言語的)と二次的なメッセージ(非言語的)の意味や内容が矛盾するコミュニケーション状況におかれると行動の選択ができない拘束状態に陥ること。

 

 

家族療法に用いられる技法
ジョイニング

参入や仲間入りの意味であり、セラピストが家族の独特の文化に溶け込んでいくための技法。家族の言動の特徴を観察し、模倣したり相互作用上のルールにあわせたりする。

 

ジェノグラム

家族療法で家族のアセスメントのための使う技法。3世代ほどをたどる家系図のことで、家族の雰囲気や家族システムを理解し、問題を整理し介入方法を立てたりするときに役立つ。

 

フレーミング

 

家族療法における技法の1つ。家族メンバーの行動や、家族に起きた出来事、関係性などの「事実」は変えずに、その文脈や意味づけを変化させる方法。概して否定的に意味づけられたものを肯定的に、さりげなく変化させる発言セラピストが行う。

 

 

 

 

 

 

 

確認問題

[1]

家族療法などで重視されている円環的因果律について簡潔に説明しなさい。

名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 人間文化専攻)

 

 [2]

 家族療法家は、個人や家族を外側から変える専門家ではなく、一時的にその( )に仲間入りし、相互作用の中で影響を受け、影響を与えながら、家族が求める変化への橋渡しをする役割をとる。

(a)コミュニティ (b)システム (c)ナラティヴ (d)ネットワーク

駒沢大学大学院 人文科学研究科 心理学専攻 臨床心理学コース)

  

[3]

以下の問に答えなさい。

 家族療法では、問題や症状を持つ者を何と呼ぶか。アルファベット二文字で答えなさい。

帝塚山学院大学大学院 人間科学研究科 臨床心理学専攻)

 

[4]

 以下の家族療法関連の記述について、それぞれ正しいものは○を、誤っているものには×をつけなさい。

ア)自己分化度とは、個人の情緒的成熟度を表すものであり、家族システムにおける自律性と依存性の程度に大きく影響する。

イ)複数の家族と面接するのが家族療法であり、個人一人だけと面接する場合は、家族療法ではありえない。

ウ)家族療法では、洞察を伴わない家族の変化は本質的な変化ではないとされ、それがあまり重視されることはない。

エ)ナラティブ・セラピーでは家族それぞれの訴えや語りを、他に代えがたい絶対的な物語とみなして尊重する。

帝塚山学院大学大学院 人間科学研究科 臨床心理学専攻)

 

[5]

家族療法の図式法について適切でないものを1つ選びなさい。

1、動的家族図

2、スクイグル

3、家族関係図式投影法

4、世代間図

5、合同家族図 

帝京平成大学大学院 臨床心理学研究科 臨床心理学専攻)

  

 [6]

(1)とは、クライエントの持つ概念的・情緒的文脈を治療的に有効なものに置き換える技法である。例えば、子どもに対して厳しすぎる父親について訴える母親に対して、「自分は嫌われても、しつけを一生懸命されているのですね」と読み替えていく。

東京成徳大学大学院 心理学研究科 臨床心理学専攻)

 

[7]

下記の用語について簡潔に説明しなさい。

・ジョイニング

静岡大学大学院 人文社会科学研究科 臨床人間科学専攻)

 

[8]

下記の用語について簡潔に説明しなさい。

・IP

静岡大学大学院 人文社会科学研究科 臨床人間科学専攻)

 

[9]

 下記の用語について簡潔に説明しなさい。

・genogram

静岡大学大学院 人文社会科学研究科 臨床人間科学専攻)

 

[10]

 下記の用語について簡潔に説明しなさい。

・circular causality

静岡大学大学院 人文社会科学研究科 臨床人間科学専攻)

 

 

 

解答

[1]

家族は相互に影響を及ぼし合い循環・連鎖しているという考え方。そのため、個人の問題は1つの原因に帰着することはできないと考える。家族療法はこの円環的因果律の考え方に基づいている。

 

 [2]

b

 

 

[3]

IP

 

[4]

×

×

×

 

[5]

 

 [6]

1、リフレーミング

 

[7]

S.Minuchinが重視した家族療法における技法である。 ジョイニングは、参入や仲間入りの意味であり、セラピストが家族の独特の文化に溶け込んでいくための技法。家族の言動の特徴を観察し、模倣したり相互作用上のルールにあわせたりする。

 

 [8]

家族療法では、問題行動や症状を呈している人物をIP(Identified Patient)とよび、IPの症状は個人だけではなく家族のSOSであるとみなす。

 

 [9]

家族療法において用いる、三世代ほどをたどる家系図のことである。ボーエン(Bowen, M.)が提唱した、家族の関係性は、世代から世代と伝承されていくと考える多世代伝達過程(multigenerational transmission process)をもとに、家族システムを理解し、アセスメントに役立てる。

 

[10]

家族は相互に影響を及ぼし合い循環・連鎖しているという考え方。そのため、個人の問題は1つの原因に帰着することはできないと考える。家族療法はこの円環的因果律の考え方に基づいており、個人を取りまく家族をひとまとまりの単位(=システム)として心理療法の対象とする心理療法である。

 

 

 

 

 

 <参考文献>

 

 

 

 

 

 

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