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虐待(abuse)

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ポイント

虐待

虐待とは自分の保護下にある人物に対して暴力をふるったり、世話をしなかったり、無視したりすることである。

 

児童虐待

児童虐待は、身体的虐待、心理的虐待、ネグレクト、性的虐待の4つに分けられる。

 

身体的虐待は、身体に外傷を生じるような身体的な暴力をふるうことが特徴である。精神(心理)的虐待は、嫌がらせをするといった心理的外傷を与えることが特徴である。性的虐待は、わいせつな行為をする又はさせることが特徴である。ネグレクトは、心身の正常な発達を妨げるような減食、長時間の放置、保護者としての監護を著しく怠ることが特徴である。

 

高齢者虐待

高齢者虐待は、これらの4つに加えて、財産を不当に処分する「経済的虐待」の5つが虐待の種類となる。

 

虐待の通告

児童虐待の通告は全ての国民に課せられた義務である。一方、高齢者虐待は、生命・身体に重大な危険が生じているときは通告が義務となるが、そうでない場合は努力義務となる。 

 

発達への影響

虐待の経験は根深く、その後の発達に対する影響力は強い。たとえば、虐待を受けた子どもは他者に対する信頼が生じにくく、他者の存在に不安や恐怖を感じることがほとんどである。また成人になってから、かつての虐待経験を再現するかのように自己破壊的な行動をしたり、あるいは加害者となることもある。また、虐待を受けた子どもたちには、PTSD愛着障害など、心のケアが必要な状況が多く見られる。

 

心理的援助

虐待を起こる要因として

①親が精神疾患やなんらかの依存症にかかっている、虐待経験がある

②親の意に沿わない子どもであった、発達の遅れがある、育てにくい子である③生活の危機、ストレスがある

③社会的に孤立している、などがあげられる。このようなリスクを心得て、まずは早期発見をすることが重要である。

また生命の危機がある場合は、心理療法以前に子どもを家庭から切り離した上で長期的な視野での治療プログラムを提供することが必要である。

 

 

確認問題

[1]

児童虐待は、(1)、(2)、(3)、(4)の4つに分類されており、2000年に(5)法が制定されて以来、社会の関心が高まっている。

(法政大学大学院 人間社会研究科 臨床心理学専攻)

 

[2]
児童虐待についての説明として適切でないものを一つ選びなさい。

児童虐待には、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待が含まれる。

児童虐待を受けたものは、自らが親となったとき、虐待の加害者となるリスクが高いとされる。これを「虐待の連鎖」とよぶ。

③同居する家族における配偶者間暴力も、児童虐待の一種である。

児童虐待が疑われる児童を発見した際の通告義務は、医師や教師、臨床心理士など、児童に携わる職種に就く者にのみ適用される。

児童虐待は、子どもの心身の成長、人間関係等に大きな影響を及ぼす。

帝京平成大学院 臨床心理研究科 臨床心理学専攻)

 

[3]

児童虐待の4つの種類をあげ、それぞれの特徴を説明しなさい。

名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 人間文化専攻)

 

[4] 

児童虐待について、緊急一時保護を最も検討すべき事例を一つ選べ。

① 重大な結果の可能性があり、繰り返す可能性がある。
② 子どもは保護を求めていないが、すでに重大な結果がある。
③ 重大な結果は出ていないが、子どもに明確な影響が出ている。
④ 子どもは保護を求めていないが、保護者が虐待を行うリスクがある。
⑤ 子どもが保護を求めているが、子どもが訴える状況が差し迫ってはいない。

公認心理師試験 第1回 問2)

 

[5]

児童虐待について、正しいものを1つ選べ。

① 主な虐待者は実父が多く、次に実父以外の父親が多い。
② 身体的虐待、心理的虐待及び性的虐待の3種類に大別される。
③ 児童虐待防止法における児童とは、0歳から12歳までの者である。
④ 児童の目の前で父親が母親に暴力をふるうことは、児童虐待にあたる。
⑤ 児童虐待防止法が制定されて以降、児童虐待の相談対応件数は減少傾向にある。

公認心理師試験 第1回 問12)

 

 

解答

[1]

1、身体的虐待

2、精神的虐待

3、性的虐待

4、ネグレクト

5、児童虐待防止法

 

[2]

4

 

[3]

児童虐待は、身体的虐待、心理的虐待、ネグレクト、性的虐待の4つに分けられる。身体的虐待は、身体に外傷を生じるような身体的な暴力をふるうことが特徴である。精神(心理)的虐待は、嫌がらせをするといった心理的外傷を与えることが特徴である。性的虐待は、わいせつな行為をする又はさせることが特徴である。ネグレクトは、心身の正常な発達を妨げるような減食、長時間の放置、保護者としての監護を著しく怠ることが特徴である。

 

[4]

「重大な結果」が出ているときは、通告義務の対象となる。

 

[5]

4

 

① 主な虐待者は実母が多く、次に実父が多い。
② 身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクトの4種類に大別される。
③ 児童虐待防止法における児童とは、18歳に満たないものとしている。
⑤ 児童虐待の相談対応件数は増加傾向にある。