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治療面接の終結

 

ポイント

 

治療面接の終結

カウンセリングの終結の基準

①自我の強化や自己肯定感の向上

自己評価が高まり、それによって日常生活における行動が改善されたとき

 

②他者との対人関係の改善

コミュニケーションスキルや自己主張スキルが向上し、円滑な人間関係が築けるようになったとき

③社会生活における適応性の改善

学校や会社に定期的に通うことができるようになったとき

 

④ストレス耐性や状況対応力の向上

日常生活におけるストレスに対する耐性が向上したとき

 

カウンセリングの終結における留意点

・カウンセラーから強制的に終結を決定するのではなく、クライエントの自主性や意向を考慮して終結に至るのが望ましい。

・カウンセリングが終結した後も、また再びクライエントにカウンセリングが必要になった場合に、気兼ねなく戻れるよう環境を整えておく。

スーパーヴィジョン(Supervision)

 

 

ポイント

スーパーヴィジョン

経験をつんだ臨床心理士であるスーパーバイザーが、経験の浅い臨床心理士であるスーパーバイジーに対して、専門性の向上を目的として行う指導のこと。これによりカウンセラーは主体的な経験と治療技法の知識を得ることが求められる。

 

スーパーヴィジョンの機能

①管理的機能

スーパーバイジーが「何をしたか」「これから何をしようとしているのか」をスーパーバイザーが確認、把握することによって、スーパーバイジーが組織の一員として活動するために、能力を発揮できる職場環境を整えることにつながる。

 

②教育的機能

新たな知識、技術を伝えることに加え、今まで得た知識、技術を業務に結び付け、すでに業務に用いられていることを意識化させる。

 

③支持的機能

ケースに関する悩み、不安、自信のなさなどをスーパーバイザーに確認してもらうことで、自分が専門職としてどの状態にいるのかを明確化できる。

 

教育分析

精神分析など言語での関わりを中心とする心理療法では、カウンセラーは相談者の投影や転移を通して「鏡」となる役割制を担うことから、カウンセラーに逆転移が起こる場合が考えられる。逆転移は場合によりカウンセリングを促進するものと成り得るため、カウンセラーはベテランの臨床心理士の下で自らクライエントとなり、自分を知り、また自らの問題を解決(または認識)しておくことが求められる。

 

 

確認問題

[1]

(1)とは、心理療法の臨床教育の基本となっている方法で、経験を積んだセラピストが経験の浅いセラピストに対して専門的教育を目的として、定期的に継続的に助言などを行うトレーニングである。

帝塚山学院大学院 人間科学研究科 臨床心理専攻)

 

解答

[1]

1、スーパーヴィジョン

 

 

 

 

カウンセリングでの沈黙

 

ポイント

 

カウンセリングでの沈黙の意味

カウンセリングの過程でクライエントが沈黙した場合、そこには以下のような意味があると考えられる。

 

①カウンセラーとの対話・自己との対話を志向する沈黙

真剣に考えていることで容易に考えがまとまらずに言葉を選んでいる時で、伝えたいことがあるがどう話せばいいか考えている。

カウンセラー側の発言をクライエントが待っている。

 

②対話を回避・妨げる沈黙

相談に対して否定的、拒否的な時で、カウンセラーに対する怒りといった感情から沈黙している。

話すことによって笑われるのではないか、と思って話すのをためらっている時、また他の人に迷惑がかかるのではないか、と不安に思っている。

 

沈黙への対応

クライエントは沈黙によって何らかのメッセージをカウンセラーに伝えている。そのため、沈黙の重苦しい雰囲気を回避するために、相談者に何とか会話を促せようといろいろな質問をするのではなく、沈黙の時間を焦ってさえぎることなく、クライエントが沈黙を通してどんなメッセージを伝えているのをじっくり考えて対応する。

カウンセリングがある程度進行した段階で沈黙が続く場合などは、カウンセラー側に逆転移を引き起こさせる事がある。この場合はカウンセラーの内面に生じた感情の解釈が、治療の新だな進展を招く可能性があることを考慮して対応することが望ましい。

ケースフォーミュレーション(case formulation)

 

 

ポイント

 

ケースフォーミュレーション(case formulation)

事例定式化。アセスメントで得られた多様な情報を系統的に整理して問題を明確化し、様々な臨末心理学の理論を用いて、クライエントが個別に抱える問題の成立・維持に関する仮説の生成・検証を行う。仮説に基づき個々のクライエントの現在の状態や間題に即した介入計画を決定・実施し、介入効果の検証を行い、必要に応じて仮説・介入計画の修正を行う。

 

 

ケースフォーミュレーションのプロセス

第一段階:問題の特定・明確化

クライエントのニーズ(治療への期待介入目標)と心理アセスメントで得られた情報に基づいてクライエントと話し合い、協働で問題を特定し具体的に明確化する(関係性の構築と動機づけの促進)。

 

第二段階:仮説の探索・生成

クライエントが現在抱えている個別的な問題の構造(発生・発展・維持のプロセス)についての仮説を生成する。また、仮説を裏付けるため、必要に応じてさらに心理検査を行い、認知面・行動面・生態面などの多元的なアセスメントを実施する(問題のフォーミュレーション)。

 

フォーミュレーション

仮説の妥当性の検証を行った上で、仮説と問題解決に向けての方針や課題などについての説明と話し合いをクライエントと行い、具体的な介入目標の設定や再確認を行う。そして、クライエントの個別性に即した介入計画を決定し、クライエントの同意を得た上(インフォームドコンセント)で介入計画を実施する。クライエントと共に介入効果の検証を行い、必要に応じて第1〜第3段階を再検討し、常に適切な介入が行われるように仮説・介入計画の修正や見直しを行う。

 

確認問題

[1]

下記の用語について簡潔に説明しなさい。

・case formulation

静岡大学大学院 人文社会科学研究科 臨床人間科学専攻)

 

[2]

ケース・フォーミュレーションについて、正しいものを1つ選べ。

① 一度定式化したものは修正しない。
② できるだけ複雑な形に定式化する。
③ 全体的かつ安定的な心理的要因を検討する。
④ クライエントと心理職との共同作業を重視する。
⑤ 症状を維持するメカニズムや診断名を考慮しない。

公認心理師試験 第1回 問18)

 

 

解答

[1]

事例定式化。アセスメントで得られた多様な情報を系統的に整理して問題を明確化し、様々な臨末心理学の理論を用いて、クライエントが個別に抱える問題の成立・維持に関する仮説の生成・検証を行う。仮説に基づき個々のクライエントの現在の状態や間題に即した介入計画を決定・実施し、介入効果の検証を行い、必要に応じて仮説・介入計画の修正を行う。作成については、生物心理社会モデルと機能分析に基づく方法がある。

 

 [2]

4

 

① ×修正しない→修正する
② ×複雑な形→単純な形
③ 心理状態は常に変化するため、全体的かつ安定的な心理的要因を検討するだけでは不十分である。
⑤ ×考慮しない→考慮する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インテーク面接(Intake interview)

ポイント

 

受理面接とも呼ぶ。相談に来た人との始めての面接のことを指し、相談者の問題やニーズを把握するための情報収集を行う。収集する情報としては、相談内容の他、必要に応じて家族構成、生育歴、現在の生活状況、学歴・職歴、相談歴・治療歴などを聴き取る。インテーク面接で相談者が来談前日に見た夢などを話し合う(組上にのせる)場合などもあることから、相談者からの電話による予約や他機関からの紹介による予約があった時点から、既に面接は始まっていると言える。

 

インテーク面接を行う際の留意点

ラポールを築く

相談者は自分自身の問題についての不安と目の前の専門家に対する不安の二重の不安を抱えて相談にやってくる。そのため、不安を軽減するためにも、相談者との間にラポールを築くことが重要であり、共感的態度で接する。

 

 

見捨てられ感を抱かせない

相談内容、または相談者の病能によっては、他機関へのリファー(紹介)が必要になることがある。リファーを行う際には、しっかりとインフォームド・コンセントを行い、相談者が見捨てられ感を抱かないように配慮する。

 

 

臨床心理士の専門業務

 



ポイント

 

臨床心理査定

種々の心理テストや観察面接を通じて、個々人の特徴や問題点の所在を明らかにすると同時に、心の問題で悩む人々をどのような方法で援助するのが望ましいか明らかにしようとする。

 

臨床心理面接

来談する人の特徴に応じて、さまざまな臨床心理学的技法を用いて、クライエントの心の支援を行うことであり、臨床心理士のもっとも中心的な専門行為である。

 

臨床心理的地域援助

特定の個人を対象とするだけでなく、地域住民や学校、職場に所属する人々(コミュニティ)の心の健康や地域住民の被害の支援活動を行う。また、一般的な生活環境の健全な発展のために、心理的情報を提供したり提言する活動を行う。

 

上記3領域に関する研究

心の問題への援助を行っていくうえで、技術的な手法や知識を確実なものにするために、基礎となる臨床心理的調査や研究活動を実施する。

 

 

確認問題

[1]

 他職種との連携・協働する際の臨床心理士のあり方として最も大切だと思うことについて、あなたの心理臨床経験を踏まえて述べなさい。

(1001字以上1200字以内)

解答

[1]

 臨床心理士の専門業務は、臨床心理査定、臨床心理面接、臨床心理的地域援助、これら3つに関する調査・研究の4つである。

 

 

精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)

ポイント

精神疾患の診断・統計マニュアル

アメリカ精神医学会の作成した「精神疾患の診断・統計マニュアル」の略が「DSM」である。

現在では、DSM-5が出ている( "5"は「第5版」)。心因性などの病因論を排し、症状のまとまりによって分類する症候論的分類に特徴がある。DSM導入のメリットとしては、診断基準が明確になり、今まで医師の主観的な傾向にあった精神疾患の判断に対して、客観的な判断を下せるようになった。そのため、医師の力量や熟練度によらず、一定の精神医学の知識を持つものであれば、ある程度信頼の高い診断をできるようになった。一方で、原因に深く追求することなく、観察される症状のみに注日して、該当する項目数によって機械的に診断を下すため、心理療法やカウンセリングを行う際には改めて心理アセスメントなどでその個人の詳細な情報を知る必要がある。また、DSMを知っている場合、詐病を装うことができるという問題点がある。

 

操作的分類

DSMの特徴の1つであり、病気の原因を前提にするのではなく、観察された症状のまとまりに基づいて除害を定義し、分類することをいう

 

 

確認問題

[1]

世界保健機構WHOのICDや米国精神医学会のDSMはどのような目的で作られたか簡単に述べなさい。

名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 人間文化専攻)

 

[2]

下記の用語について正式名称を英語または日本語で答え、簡潔に説明しなさい。

DSM

静岡大学大学院 人文社会科学研究科 臨床人間科学専攻)

 

 

解答

[1]

世界保健機構WHOの ICDは、死因や疾病の統計などに関する情報の国際的な比較や、医療機関における診療記録の管理などのために作られた。一方、DSMは当初、統計調査のために作成された。DSM導入により、診断基準が明確になり、今まで医師の主観的な傾向にあった精神疾患の判断に対して、客観的な判断を下せるようになった。そのため、医師の力量や熟練度によらず、一定の精神医学の知識を持つものであれば、ある程度信頼の高い診断をできるようになった

 

 [2]

精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)

アメリカ精神医学会によって出版された書籍である。精神障害の分類のための共通言語と標準的な基準を提示している。これにより、診断基準が明確になり、今まで医師の主観的な傾向にあった精神疾患の判断に対して、客観的な判断を下せるようになった。