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ボウルビー(Bowlby, J.)

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ポイント

愛着とは、親と子どもの間の無条件の信頼関係を指す。(つまり、母親といった特定の対象(大人、養育者)に対する特別の情緒的な絆をいう。)

アタッチメント関係は養育者と子どもとの情動制御の中で形成される。

愛着はボウルビー(Bowlby, J.)によって提唱された概念である。

養育者の顔をじっと見つめたり、笑ったり、抱きついてきたりなど、乳児はさまざまな行動を養育者に対して行う。養育者もこのような行動をとる赤ちゃんをかわいいと思い、頼られていることを心から嬉しく思いながら世話をする。

このようにして、養育者と子どもの間に心のきずなとしての愛着(アタッチメント)が形成されていく。

ボウルビィは、養育者の世話を誘発するような乳児の行動を愛着行動と呼び、無力な状態で生まれてくる人間の乳児にとって、有効な社会的適応システムだとした。

 

乳児の人見知り(生後7〜8ヶ月ごろ)は愛着が形成されたことを意味している。6ヶ月以降の乳児には、母親(あるいは養育者)が部屋から出て行くときに泣き叫んだり追い求めたりし、母親が戻ってくるとしがみついたり喜んだりする行動が見られるようになる。こうした、母親に接近したり、近接を維持しようとする乳幼児の行動を「愛着行動」という。

 

また、ボウルビーは内的ワーキングモデルを提唱した。

これは、発達初期の、養育者との関係の中で形成される認知的枠組、スキーマのことである。成人期になってからの他者との関係のあり方にも影響すると考えられている。

 

母性剥奪(Maternal deprivation)

生後3ヶ月頃から12ヶ月の期間に渡る良好な母子関係の相互作用の欠如の結果、人格形成精神衛生上に起きる影響のことをいう。

 

ホスピタリズム(hospitalism)

何らかの事情により長期に渡って親から離され施設に入所した場合に生じる情緒的な障害や身体的な発育の遅れなどの総称。スピッツは乳幼児に養護施設に預けられた子供たちに、特徴的な発達の遅れがある施設症(ホスピタリズム)の問題があることを報告した。スピッツは、適切な母性の基ではなく、施設などで育った子供が情緒的、あるいは身体的に発達の遅れが見られることを実証的に示した。

 

ボウルビーは、第二次世界大戦後イタリアの孤児院の子供たちに成長・発達の遅れが見られるのは、単に施設の衛生面や栄養面の問題ではなく、母子のスキンシップを中心とした相互作用が欠如していることが原因であると考えた。

 

 

 

確認問題

 

[1]

愛着に関する記述として、誤っているものはどれか。
1.ボウルビィ(Bowlby、J.)は、人間が愛着を形成する生得的傾性を有して誕生すると考えた。
2.ローレンツ(Lorenz、K.)は、アカゲザルを対象とした代理母の実験を通して、対象希求性が一時的な動因であることを示した。
3.エインズワース(Ainsworth、M. D. S.)は、愛着の質を測定する方法としてストレンジ・シチュエーション法を開発した。
4.ストレンジ・シチュエーション法では、親との分離時に多少の泣きや混乱を示す、再会時には積極的に身体的接触を求め容易に落ち着くタイプの愛着を安定型としている。
5.乳幼児期に形成された愛着は、内的ワーキングモデルとして存在し続けると考えられている。

目白大学大学院 心理学研究科 臨床心理学専攻)

 

[2]

次の各事項に関係する人名を右の欄から選びなさい。

 

1.自我同一性

2.洞察学習説

3.外向性一内好性

4.形式的操作期

5.愛着(アタッチメント)

 

A. ユング

B. ピアジェ

C. エリクソン

D. ボウルビー

E. ケーラー

神戸親和女子大学院 文学研究科 心理臨床学専攻)

 

[3]

Bowlbyによる愛着理論の提唱の後、一般の人々に対して多大な誤解が生み出された面もあった。まずその誤解とはどういったものかを説明し、その後、学術上その誤解はどのように払拭されてきたか、説明しなさい。

名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 人間文化専攻)

 

[4]

戦争孤人児などの施設において長期母子分離の影響を調べ、愛着形成の過程を明らかにしたのは(1)である。

名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 人間文化専攻)

 

[5]

(1)は、乳幼児期の早期に母性的養育の剥奪を受けた子どもは時によって精神発達の遅滞、身体的成長の障害、情緒を欠いた性格障害など、さまざまな心身の発達の障害を呈する可能性を示唆した。

 (名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 人間文化専攻)

 

解答

[1]

2

 

[2]

1、C

2、E

3、A

4、B

5、D

 

[3]

Bowlbyによる愛着理論の提唱の後、一般の人々に対して生まれた誤解は、愛着イコール愛情をいうものである。愛着の形成はそばにいてケアをしてくれる人に対して生まれるものであり、たくさんの愛情を注いだら生まれるものではない。のちに、ウィニコットがほどよい母親を提唱した。これにより、育児に対して特別強い熱意が必要ではなく、どこにでもいるような自然に愛情を子供にそそぐ母親が良いとされた。

 

[4]

1、ボウルビィ

 

 [5]

1、Bowlby,J.(ボウルヴィ)