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ピアジェ(Jean Piaget)の認知発達段階説

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ポイント

 

Piaget, Jeanは、スイスの心理学者で、認知発達段階説などを提唱した。 発生的認識論(genetic epistemology)は、哲学的認識論のように認識一般を問題とするのではなく,数学的認識,物理的認識,生物学的認識など諸々の認識を個別的に取り上げてその発達過程を検討する。

ピアジェは、発生的認識論(genetic epistemology)において、認知の発達段階を、 感覚運動期、 前操作期、 具体的的操作期、 形式的操作期に区分した認知発達段階説を提唱した。

 

 

感覚運動期 (0〜2才)

感覚と運動を通した外界への働きかけを繰り返し(第一次〜三次循環反応)、シェマの同化調節均衡化を通してシェマを変化・協応させていく時期。対象の永続性や対象に意図的に働きかけを行手段-目的関係が成立する時期。(知能の芽生え)

 

対象の永続性(object permanence):対象が視界から見えなくなっても存在し続けることを認識すること。生後8ヶ月くらいから成立する。

 

前操作期(2〜7才)

前操作期:前概念的思考段階(2〜4才)

対象や行為などが心の中に内面化され、象徴(シンボル)機能を持ち、心的イメージとして発展していく時期。まだ概念的思考(個とカテゴリーなど)はできない段階。

前概念的思考段階は、象徴的思考期との言われる。

象徴的思考は、表象(目の前にないものや現象を心に思い描くこと)が可能になったことをいう。

 

前操作期:直感的思考段階(4〜7才)

内面化された象徴機能により心的イメージを用いた思考や言語が発達し概念化が進む時期。個とカテゴリーの識別も可能になり概念的思考による直感的理解や判断が可能になる。しかし思考は一面的で見た目に左右される。可逆性や保存の概念が不十分(自己中心性)。

 

アニミズム(animism)

命のない事物を、あたかも命があり、意志があるかのように、擬人化して考える傾向のこと。

 

自己中心性(ego-centricity)

自分自身の視点を中心にして周囲の世界を見ること。

⇔脱中心化

 

延滞模倣

表象の社会的イメージの記憶・同一化の心理機制を活用して「ごっこ遊び(ままごとお医者さんごっこ。買い物ごっこ)」が出来るようになる。

 

可逆性や保存の病念が不十分

物の数量はその形が変わったとしても、同じままであるという理解が出来ず、一部の目立った特徴だけ見てしまう。主体客体の未分化(自己中心性)で他者の視点がない。

 

具体的操作期(7〜11才)

階層的な概念構造の形成が進み、目の前にある具体的な事物であれば心的イメージと概念を用いた論理的な思考(操作)ができるようになる時期。自己中心性の減少とともに見た目に左右されずに多面的に物事を捉えることが可能となり可逆性や保存の概念も成立する。また他者との相互作用の中での思考も可能となる。しかし「もし〜なら」などといった仮説を前提とした思考(仮説演掃的推論)はまだできない。

 

保存(conservation)

形を変えても対象の性質(重さ、量など)は変化しないことが理解できること。

 

操作(operation)

目の前で起こっていないことを、心の中で表象を用いて行う論理的思考のことをいう。例えば「3個のみかんと2個のりんごを足す」という計算を、実際にみかんとりんごが無くても想像してできること。

 

三つ山課題(three mountains task)

ピアジェが子どもの空間認知能力を調べるために開発した課題(立体的な山の模型)である。この模型を子どもにいろいろな方向から見せて、その形や大きさを答えさせる。まだ前操作期の子どもでは、自分の側から見えた光景と、別の方向から異なった見え方をする山とが、同じものであることを認識できない。これを指して、認知がまだ自己中心的であるとした。具体的操作期にできるようになる。

 

 

形式的操作期(12〜才)

具体物や場面でなくとも抽象的な命題の概念操作によって論理的な思考が可能になる時期。「もし〜なら」などといった仮説を前提とした思考(仮説演掃的推論)や組合わせ推論、比例概念などの科学的・実験的な論理思考ができるようになる。

 

 

 cf.

ピアジェによれば、発達は進化の過程になぞらえることができ、子どもが外界と相互作用しながら、知識識を身につけていくとされる。

 

ピアジェが唱える幼児期の認知的特徴である自己中心性が認められるときには、無生物と生物を混同するアニミズム的思考が起こるとされる。

 

ピアジェの発生的認識論では、泥団子をお問頭に見立てて遊ぶことができるのは前操作段階に入ってからある。

 

 

確認問題 

[1]

Piaget, J.が提唱した認知発達説において、言語や記号を使った抽象的な論理的思考が可能となる段階は(1)期である。

昭和女子大学大学院 生活機構研究科 心理学専攻)

 

[2]

J.ピアジェは、児童期に見られる思考の客観化として、(1)を挙げた。これにより人は、物事を自分の見方や立場から離れていくつかの側面から考えることが可能になる。(東京成徳大学大学院 心理学研究科 臨床心理学専攻)

 

[3]

Piaget, J.は認知の発達段階を順に感覚運動期、(3)期、(4)期、形式的操作期に区分している。

東京学芸大学大学院 教育学研究科 教育支援協働実践開発専攻 臨床心理学プログラム)

 

[4]

以下の1〜3に入る最も適切な言葉を語群から選びなさい。

ピアジェは1歳半頃から(1)にかけての時期を( 2 )とし、この時期の子どもの認知的制約を示す特徴を( 3 )とよんだ。これは自他が未分化なため、自分の視点や経験を中心にして物事を捉え、他人の視点に立つことが難しいことを指している。

1.感覚運動期 2.形式的操作期

3.前操作期 4.具体的操作期

5.3〜4歳 6.6〜7歳

7.9〜10歳 8.自己中心性

9.脱中心化 10.自己意識 

関西大学大学院 心理学研究科 心理臨床専攻)

 

[5]

認知発達とは同化と調整の均衡化によって、認識の枠組みが変化していくことだと考えた、心理学者の人物名で正しいものを一つ選びなさい。

1. Lev Semyonovich Vygotsky 2. Anna Freud

3. Melanie Klein 4. John Bowlby

5. Jean Piaget

 (帝京平成大学大学院 臨床心理学研究科 臨床心理学専攻)

 

[6]

( )に入る語を答えなさい。

アン・サリー課題」や「三つ山の課題」と呼ばれる心理学実験では、いまだ自己の視点を相対化することができす、他者の立場場に立てない幼児期の心理的特徴が明らかにされている。ピアジェ(Piaget、J.)は、幼児期に見られるこうした社会性の欠如を

(1)という概念で示している。

帝塚山学院大学大学院 人間科学研究科 臨床心理学専攻)

 

[7]

 三つ山問題とは、誰が提唱した、発達段階のどの時期の、どのような特徴を調べるための課題であるのかを説明しなさい。

名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 人間文化専攻)

 

[8]

2つの対象の長さを比較するとき、具体的操作の段階にある生徒はどのような方法で比較するか述べなさい。

名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 人間文化専攻)

 

[9]

ピアジェが提唱していない考えを選びなさい

1、形式的操作 2、発達の最近接領域 3、同化と調節 4、自己中心性

名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 人間文化専攻)

 

 

[10]

次の用語のうち、Piagel, J.の認知発達に関わりのないものはどれか、もっとも適切なものを一つ選びなさい。

 1.感覚運動 2.観念運動 3.具体的操作 4.形式的操作

静岡大学大学院 人文社会科学研究科 臨床人間科学専攻)

 

[11]

下記の用語を簡潔に説明しなさい。

・Piaget, Jean

・発生的認識論 

静岡大学大学院 人文社会科学研究科 臨床人間科学専攻)

 

解答

[1]
1、形式的操作

 

[2]
1、脱中心化

 

[3]
3.前操作
4.具体的操作

 

[4]
1、6
2、3
3、8

 

[5]
5

 

[6]
1、自己中心性

 

[7]

 三つ山問題は、ピアジェが子どもの空間認知能力を調べるために開発した課題である。具体的操作期(7〜11才頃)における、子供が自分の側から見えた光景と、別の方向から異なった見え方をするものとが、同じものであることを認識できるかどうかを調べるための課題である。つまり、三つ山問題は、自己中心性の減少とともに見た目に左右されずに多面的に物事を捉えることが可能かどうかを調べている。

 

[8]

具体的操作の段階では、目の前にある具体的な事物であれば心的イメージと概念を用いた論理的な思考(操作)ができるようになる。そのため、実際に並べたりせず、心の中で長さを比べる。

 

[9]

2 

 

[10]

2

 

[11] 

Piaget, Jeanは、スイスの心理学者で、認知発達段階説などを提唱した。

発生的認識論(genetic epistemology)は、哲学的認識論のように認識一般を問題とするのではなく,数学的認識,物理的認識,生物学的認識など諸々の認識を個別的に取り上げてその発達過程を検討する。