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観察法(observation method)

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ポイント

 

調査対象の行動を注意深く見ることによって対象を理解する研究法である。観察法は自然観察法と実験観察法に大きく分けることができる。自然観察法は、条件を統制しない自然な状況で対象を観察する方法である。主に仮説生成的研究で用いられる。実験的観察法では、ある一定の状況下で観察を行い、因果関係の有無を見る方法である(ストレンジシチュエーション法、視覚的断崖など)。

(長所)対象者への拘束が少なく自然な行動を対象にできる。乳幼児、障害児、動物なども研究対象とすることができる。

(短所)観察対象とする行動は制限がある(プライベートな行動は観察が難しい。)観察の視点や解釈が主観的になりやすい。

 

 

場面見本法(situation sampling method)

観察場面を観察単位とする観察法。観察対象となっている行動の出現願度が高い場面を取り上げ、その場面での観察対象者の行動を観察する。その場面で対象となる行動がどのような先行刺激によって生じるのか、あるいは抑制されるのかなどを記録する。【例】ICU看護師の手洗い行動がどれぐらいできているかを調べるために、手洗い場という場面を複数選び、そこでの行動観察を行う。

 

時間見本法(time sampling method)

観察する時間間隔を観察単位とする観察法。観察を行う時間間隔をあらかじめ決めておき、その時間内に研究対象となる行動の出現顔度や持続時間などを記録する。行動の出現頻度や持続時間といった量的なデータが収集できるため、数量的分析も容易に行うことが可能となる。

【例】交通量調査など。

 

事象(行動)見本法(event sampling method)

事象や行動を観察単位とする観察法。観察対象となる行動そのものを集中的に観察する方法であり、その行動がどのような状況で発生するのか、どのような経緯を経て終わるのかなどを記録する。観察対象となる行動がはっきりと決まっており、発生頻度の低い行動がターゲットの場合には有効である。質的研究で用いられやすい観察法である。【例】子どものかんしゃくがどのような経緯で起こるのか、時間をかけて観察する。

 

 

確認問題

[1]

時間見本法による行動観察について、その留意点を1つあげつつ説明しなさい。

名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 人間文化専攻)

 

[2]

「実験法」もしくは「観察法」の何れかを一つ選び、他の研究法と対比しながら、①その研究法の特徴、②適切な研究成果を得るための留意点について、簡明に論じなさい。

静岡大学大学院 人文社会科学研究科 臨床人間科学専攻)

 

解答

[1]

時間見本法の留意点は、行動観察において観察対象とする行動には制限があり、観察の視点や解釈が主観的になりやすい点に留意する必要がある。

 

 [2]

①観察法の特徴は、対象者の比較的自由な行動を観察するため、自然な行動を対象とすることができる。一方、実験法は、人工的な状況でデータを集めるため、自然な日常生活の中で生じる行動を説明できるとは限らない。

②観察法は、データの性質が観察者の見方や記述・整理の仕方に大きく依存するため、データの信頼性を厳しくチェックする必要がある。一方、実験法は研究場面を統制することができるため、観察の視点や解釈が客観的に行われ、信頼性の高いデータを集めやすい。